人文学部_学部案内2019
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17From Professorsおかしいでしょう(笑)。でも, 自分の生理的な次元とか感情的な次元まで, いまの時代の経済構造に支配されているのかと思ったら, なんだか情けないやら悔しいやら。そこから, 権力者の食をとりあげてみようと思ったのです。きっと古代天皇ですら, 食べ物については, その時代の経済構造に支配されていたはずだって予想してね。あと方法論上の問題でいうと, 歴史学では80年代に「社会史」というのが流行った。それまでの歴史学がとりあげてこなかった人々の日常生活とかに注目する学問だったんだけど, 結局, 昔の生活のなかの些末ともいえるディテールを追いかけるだけになってしまったり, あるいは「昔の村はよかった」的な議論になりがちだった。だから「社会史」は, 90年代に入る頃には壁にぶつかっているようにみえた。でも一方で, 70年代までのような俗流マルクス主義的な, 硬直してしまった研究スタイルにも, もう戻れない。そこで, 日常をあつかう柔らかな社会史と, 支配や権力といった古くからのテーマをあつかう硬い国制史とをミックスしてやろうと思った。食事という, 日常的で小さなところからはじまって, 気がつくと国家構造とか国際関係とか, そんな大きなところにつながっていく論文を書いてみたかったのです。——そんな背景があったんですか…。それでは, 最近はどんなことに関心を?——「日本」の社会や文化にとって, どうやら9世紀から10世紀にかけての時期が, 大きな一つの転換点になっている。注目すべきことに, その時期, 東アジア世界全体が激変しているのです。これらのことは, きっと強く連動している。東アジア世界の国際関係の変化が, 古代日本の国家や社会・文化のかたちまで変えていく…。それを実証したいというのが, ここ数年来の念願です。そのときの変動がなければ, いまの日本は全然違うものになっていたんじゃないかなって。——ゼミの学生には何を求めたいですか?——うーん。クリティカルであること, かなぁ。当たり前だと思っていることを疑い, 自分の頭で吟味すること。今あることが絶対なわけじゃないから。毎日暮らしているなかで何かおかしいと思うことがあっても, 「いまそうなっているから」「昔から決まっていることだから」っていう理由で諦めることがあるでしょう? でも, 当たり前だと思っていることを疑って, 動かせる部分は動かしていくことによって, 違う道筋が見えてくる。過去の経緯が分か佐藤̶佐藤̶佐藤

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