人文学部研究紹介
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3主要学術研究業績所属学会と学会での活動経 歴研究から広がる未来と将来の進路●研究分野哲学・芸術論コース●教授 早坂 俊廣中国哲学哲学・思想論分野●現在の研究テーマ1.宋から清にかけての中国思想史,いわゆる「朱子学」と「陽明学」を研究しています。こういう書き方をしますと,何だか朱子や王陽明を「偉い人」と崇め奉っているような印象を与えてしまうかも知れませんが,どちらかと言えばその逆で,彼らのような人たちがどういう脈絡(地縁,人間関係,記録の伝わり方等々)のなかで「偉い人」として描かれるようになっていったのか(専門的な言い方をするならば,「中国近世浙東地方における思想伝承・思想史叙述の様態」)を研究しています。2.いわゆる「朱子学」と「陽明学」では,「心」「性」「命」「理」などといった思想概念が議論の俎上にあがります。こういった彼らの議論のさまを,可能な限り当時の脈絡に寄り添いつつ,しかし現代の日本に生きている自分自身が実感をもって理解できるように研究しています。言語体系も生活環境も大きく異なる「彼ら(未知の友人たち)」との「対話」を重ねていくことを通して,現代の日本に生きている自分の「立ち位置」を見極めたいと考えています。これが,私の考える「比較哲学」の実践です。「中国の古典」を読むということは,空間的にも時間的にも現代日本と大きく隔たった知の世界に触れる体験となります。その体験を通して,未来を見通す力や多文化共生の術が体得されたならば,それらは様々な進路に応用可能なスキルとなりましょう。【著書】*小島毅(監修)早坂俊廣(編集)『文化都市 寧波』(東京大学出版会 2013年刊)  「東アジア海域に漕ぎだす」シリーズの第2巻です。同巻全体の編集をするとともに,第Ⅱ部第3章「思想の記録/記録の思想-寧波の名族・万氏について」とコラム「「中国のルソー」を育んだもの」「寧波の英雄・張煌言」を執筆しました。【論文】*早坂俊廣「潘平格の生涯と思想」(『東洋史研究』第73巻第2号,pp.101―135 2014年9月)  明末清初の思想家である潘平格を正面から取り上げた本邦初の論文です。*早坂俊廣「場所の記憶/全祖望の記録」(『中国―社会と文化』第27号,pp.196―211 2012年7月)  清代の思想家である全祖望が様々な「場所」をどのように「記録」したのかを検討することを通して,彼の思想を解明した作品です。 「日本中国学会」「東方学会」「中国社会文化学会」「広島哲学会」「比較思想学会」に所属しています。 また,これまで「東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成」「王畿の良知心学と明末の講学活動に関する基礎的研究」「王畿の良知心学と明末の講学活動に関する発展的研究」「陽明門下の講学活動と「会語」資料に関する総合的研究」といった共同研究(科学研究費補助金)に参加してきました。1993年3月広島大学大学院文学研究科(中国哲学・インド哲学専攻)博士後期課程単位取得退学。1993年4月国立北九州工業高等専門学校(一般教育)専任講師。その後,同助教授を経て,2002年4月信州大学人文学部助教授。その後,同准教授を経て,2015年4月から同教授。

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