人文学部研究紹介
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21経 歴●研究分野歴史学コース研究から広がる未来と将来の進路主要学術研究業績所属学会と学会での活動東洋史分野●現在の研究テーマ1.清朝政治史   中国という巨大な国家は,どのようにしてその政策を策定し,実施しているのでしょうか。現代では共産党独裁といい,前近代には皇帝独裁であると言われてきました。しかし「独裁」とは何でしょうか。「独裁」する立場にある人は,なんでも好き勝手に出来るのでしょうか。国家の政策というのは,なにに規定されて決まり,動いてゆくのでしょうか。17世紀から20世紀までを視野に入れつつ,特に清朝という王朝における政策決定過程(特に対外政策)について検討を行っています。2.清朝経済史   現在,中国の大国としての影響力はよく知られています。では,その影響力は昔から一貫したものなのでしょうか?じつはついこの間まで,中国経済は,むしろちょっと貿易赤字が増えるとあっという間に不況に突入する脆弱なものであると自他共に認識していました。では,その脆弱性はどこからくるのか。いまでもあるのか。いつからあるのか。米価変動や国際貿易収支などの分析を通じて,長期的な経済構造変動の検討を進めています。歴史学は,結果がすでに出ている人間の行動や社会の動きを分析する学問です。東洋史学はアジア諸地域についての理解を深めるものですが,同時に,歴史学という学問手法を通じて,人間社会一般が持つ傾向なども幾分理解できるでしょうし,限りある材料を駆使して,自分の主張に説得力を与えてゆく技術も身につくでしょう。歴史学にかかわる知見は,成熟した社会の構成員に必要な要素のひとつとなるでしょう。『海賊からみた清朝:十八~十九世紀の南シナ海』(藤原書店 ,2016年) 18-19世紀に,中国沿海で活動していた海賊について,彼らの素性という社会経済的な側面のみならず,彼らを討伐しようとする清朝政府,あるいはイギリス,マカオのポルトガル人などがつむぎだす国際関係について分析を加えています(あんまりロマンのない話です)。「嘉慶維新(1799年)再検討」(『信大史学』40,pp.1-26,60,2014年) 18世紀を通じて漢人社会は急速な経済発展を遂げました。その漢人社会を治める清朝政府当局者たちは,拡大する漢人社会の影響力に配慮して漢人に受け入れられやすい態度を取るようになります。1799年に親政を始めた嘉慶帝の政策からこの間の政治構造変動を分析しています。史学会,東洋史研究会,社会経済史学会,中国社会文化学会,歴史学研究会,中国文史哲研究会,信大史学会,The Association for Asian Studies (AAS)2002年 千葉大学文学部史学科卒業2010年 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学 博士(文学)2010年4月~2013年3月 日本学術振興会特別研究員PD2013年4月~2014年3月 東京大学大学院人文社会系研究科研究員2014年4月~ 現職●准教授 豊岡 康史清朝政治史・経済史

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