人文学部研究紹介
15/44

13経 歴●研究分野所属学会と学会での活動主要学術研究業績研究から広がる未来と将来の進路心理学・社会心理学コース生理心理学,心理生理学心理学分野●現在の研究テーマ1.人が動いているものを「動いている」と知覚できるのはなぜか? 問いはシンプルですが,この問いに科学的な回答をするのはいまだに難しいのです。このテーマは心理学では運動知覚といわれており,このことに関する実験的な研究を,知覚的な視覚現象と脳の生理学的な反応との対応づけを試みながら研究しています。特に最近は,脳の磁場変化を捉える脳磁図(MEG)という装置を利用した研究を行っています。2.知覚には様々な錯覚が生ずることが知られており,特に視覚現象ではこれまでに多くの研究がなされています。図1は発見者の名前を冠した同心円錯視といわれるもので,左側の外円と右の単円とは物理的に同じ大きさで描かれていますが,実際は左側の外円のほうが少し小さく見えないでしょうか(つまり右側の単円がより大きく見える)。このように単純な幾何学的な図形において錯覚が生ずることが知られており,この問題について,すでに100年以上にわたって研究が行われてきています。しかし,これもまだ心理学的に解決されていない問題の一つです。こんなことを研究しています。基礎的な心理学研究が,すぐに現実の場面や職業選択で役立つわけではありません。しかし,視覚的な錯覚などが影響し交通場面で事故を誘発するような場合があったり,動いているはずのものが「動いて見えなかったり」という我々の認知的なエラーはどういった状況で生じやすいのか,などの「人の特性についての科学的理解」は,各種の「人を見る目」を必要とする職業一般において役に立つものです。今井章 (2015). デルブーフ錯視からリップス大きさ錯視へ─内円が外円の外に移動する条件における事象関連電位の検討─ 信州大学人文科学論集, 2(49), 91-105.今井章 (2016). デルブーフ錯視からリップス大きさ錯視へ(2)─外円が移動する布置条件における事象関連電位の検討─ 信州大学人文科学論集, 3(50), 63-75.今井章・大内剛 (2016). 地域の防犯における標識看板制作の試み─自転車盗難の防止策として─ 地域ブランド研究, 11, 1-13. Imai, A., Takase, H., Tanaka, K., & Uchikawa, Y. (2016). Magnetoencephalographic correlates of apparent motion illusion of beta movement. Electronics and Communications in Japan, 99, 46-54.  DOI 10.1002/ecj.11785. 今井章・Y.ロセッテイ・P. レヴォル (2017). ディスクの回転による触覚の錯覚現象について―Cormackのコイン回転錯触の再考― 信州大学人文科学論集, 4(51), 85-91.日本心理学会会員(1984年~現在に至る),日本生理心理学会会員( 1986年~現在に至る),同編集委員会委員(2012年~現在に至る),日本基礎心理学会会員(1996年~現在に至る),日本認知科学会会員(1996年~現在に至る),日本認知心理学会会員(2005年~現在に至る),日本視覚学会会員(2008年~現在に至る),日本生体磁気学会会員(2012年~現在に至る),日本応用心理学会会員(2012年~現在に至る)1989年4月 日本学術振興会特別研究員(PD)1990年4月 名古屋大学文学部助手1993年10月 信州大学人文学部助教授2007年4月 信州大学人文学部准教授2010年1月 信州大学人文学部教授2013年4月 信州大学人文学部評議員・人文学部副学部長2017年4月 信州大学学術研究院人文科学系評議員・学術研究院人文科学系副学系長●教授 今井 章図1 デルブーフ錯視

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る