農学部研究紹介2018-2019
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伊原正喜助教日本学術振興会特別研究員、理化学研究所、東京大学を経て2009年10月より信州大学農学部。蛋白質や酵素を自由自在に改造して、光合成生物の物質生産能力を高める技術開発に興味がある。我々の研究室では、微生物の力を借りた石油代替物質の生産に関する研究を行っています。現在は特に、休耕田などで微細藻類を培養し、そこから生産された糖質を分解し、バイオエタノールやバイオプラスチックに改質する研究や、太陽光発電と微生物を組み合わせた半人工光合成系で、二酸化炭素を固定化し、様々な有用物質を合成するための研究に注目しています。そのために、微生物の育種や、蛋白質レベルでの微生物の改変などを行っています。私たちはバイオテクノロジーを駆使して、エネルギー問題などの人類が直面している問題に寄与することを目指しています。現在、化石燃料の使い過ぎによって生じた問題によって、我々の社会は様々な面で行き詰っていますが、光合成微生物や植物は、太陽光と二酸化炭素と水から様々な物質を巧みに合成し、環境を汚すことなく繁栄しています。生物から多くの事を学び、さらに改良していくことが、これからの社会に求められていると思います。遺伝子や蛋白質の設計・調製、化学物質の合成・分析実験を通して多様な実験手法が身につきます。また、チームで研究を行うことが多く、仲間との議論を重ねて研究を進める力を養うことが出来ます。卒業後は化学会社、製薬会社、食品会社等で活躍出来る人材になります。微生物の༂次世代エネルギーを作りたい光合成生物による物質生産の未来像とそれを支える遺伝子工学・蛋白質工学無菌操作用クリーンベンチ(左)、光合成微生物の培養(中)、各種分析機器(右)生物有機化学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像生命機能科学コース千菊夫教授1987年6月、信州大学農学部助手に着任。助教授を経て2005年4月より現職。生化学・分子生物学、遺伝子工学、微生物学の手法で、農業バイオテクノロジーに用いられる微生物の生命現象解明と利用に関する研究を行なっている。微生物殺虫剤Bacillus thuringiensisの顕微鏡写真同菌は殺虫性タンパク質を大量生産し細胞内にクリスタルを形成するスエヒロタケ(左)とウシグソヒトヨタケ(右)の子実体これらの担子菌キノコは、シャーレや試験管の寒天培地上でも子実体形成するため、モデル担子菌として用いられている有用微生物資源を活用して豊かで持続可能な社会を創るー遺伝子、細胞、物質生産ー専攻研究を通して生化学・分子生物学系の実験手法、微生物の取扱い法が身につきます。また、自ら立案し試行錯誤を重ねながら研究を進めることで、課題克服能力を養います。卒業後は食品会社、化成品会社、製薬会社等で活躍できる人材になります。微生物殺虫剤Bacillus thuringiensisに関する研究を進めることは、環境負荷が大きい化学合成農薬の使用量を低減し持続可能な社会を構築することに役立ちます。また、世界人口の増加に伴う食料不足の問題を解決することも可能となります。一方、担子菌キノコの子実体形成に関する研究を進めることは、キノコの大量・迅速栽培の道を拓くばかりでなく、機能性食品や医薬品の素材としてキノコを利用する産業を活性化させます。原核および真核微生物資源を対象として、下記のテーマで分子生物学・遺伝子工学的研究を行っています。(A)微生物殺虫剤の開発グラム陽性菌Bacillus thuringiensis(Bt)は、農業・衛生害虫に対して毒性を有する結晶性菌体内顆粒(クリスタル)を生産することから微生物殺虫剤として用いられています。Btの殺虫性タンパク質および同遺伝子の安全かつ有効な利用を目指して研究を進めています。(B)担子菌の子実体形成機構の解明担子菌キノコは、食品・医薬品産業上重要である一方で、カビ状の菌糸から子実体へと劇的な変化をするため形態形成の見地からも興味深い生物です。遺伝的解析、子実体形成実験の容易なモデル担子菌(スエヒロタケとウシグソヒトヨタケ)を用いて研究を行っています。分子生物学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像生命機能科学コース3

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