農学部研究紹介2018-2019
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農業経済学研究室谷顕子助教日本学術振興会特別研究員、神戸大学大学院農学研究科研究員を経て、2015年4月より現職。研究分野は農業経済学。主に戦後の食生活の変化から食料問題の規定要因を探り、食料・農業政策への提言を目指す。戦後、日本では一世帯当たりの人数が減少し続けており、今後も少子高齢化のもとで単身世帯が増加し、世帯の縮小に歯止めがかからない状況です。「家計の小型化」は、人口減少による食料消費量の減少をもたらすだけでなく、食料自給率の低下と深く結びついています。なぜ日本の食料自給率は低下し続けてきたのか、その上で、今後の国内農業はどうあるべきなのか。こうした大きな問題を考えるヒントが、小型化した世帯の中に隠されています。農業経済学研究室では、社会統計データや経済学的手法を駆使して現実をリアルに捉え、政策提言による食料・農業問題の解決を目指しています。農業経済学は、農業(生産者)、食品産業(流通・加工・外食)、家計(消費者)に至るまで、幅広い領域をカバーした研究分野です。食料の輸入大国である日本において、農産物の国際市場や貿易を取り巻く環境の変化は、私たちの毎日の食生活にも大きく影響する時代になっています。経済学のツールを用いて、身近なところから、一つずつ地道に「なぜ」を解明していくと、おのずと世界レベルの食料問題を見通すことができるようになります。それは同時に、将来のあるべき農業の姿をイメージするための道標でもあります。自然科学と社会科学の両方を学べる環境にあるため、就職先も多様な選択が可能です。研究室では「自分の興味の対象を課題・仮説として具体化し、実態を把握して解決方法を考える」ための実践力を身につけ、いろいろな事態へ対応力や問題解決能力を養えます。คฅ༂܅̅༂Ԇ༂ഇ̇Ćअԉ༄༂Ԇ༈आԅईఆABBC先生のお写真世帯規模と食料自給率はほぼ同様に減少している。この背景にあるメカニズムは…?統計データを用いた計量分析を行うことで、客観的指標を用いて現実を解析することができる79%60%53%48%40%39%4.1人3.4人3.2人3.0人2.1人2.4人196019101980199020002010食料自給率(カロリーベース)世帯規模(一世帯当たりの人数)資料:総務省『国勢調査』、農林水産省『食料需給表』研究から広がる未来卒業後の未来像植物資源科学コース国際農学教育研究センター浜野充講師近畿大学農学部卒、JICA青年海外協力隊、英国UEA農村開発学修士課程修了、JICAジュニア専門員/技術協力プロジェクト専門家、名古屋大学生命農学研究科博士後期課程修了後、研究員を経て、2015年4月より現職。開発途上国の農業・農村開発における課題解決のための実践的研究に取り組む。開発途上国の農村に入り、農業・農産物加工業の課題分析・課題解決の実践・評価を繰り返し、農村社会の持続的発展の方法を見出す研究を行っています。その成果とノウハウを途上国の教育・研究現場に発信し人材を育成します。2008年から、カンボジアの農村で営まれる伝統的米蒸留酒造の品質改善と収入向上について、カンボジアの農業大学と研究に取り組んでいます。世界人口が90億に達しようとする中、その8割以上が途上国に暮らし、多くは農村で農業を営んでいます。人口の急増に対し生産性向上や農地拡大は頭打ちで、貧困や環境破壊が深刻な地域が多くあります。それぞれの地域で持続的な農業生産と収入向上が持続的な社会の発展を導く土台になります。地域によって課題も解決方法も様々で、そこで暮らす人々と共に考え動くことが重要です。「先進国から途上国へ」という一方的な「援助」の関係は薄れつつあります。地域と地域が直接つながる時代でもあります。農業・農村が抱える課題や改善方法について、国境を越えて学び合い協力し合うことが必要です。日本の農業普及・生活改善・地域振興の経験は途上国の農村で必要とされていて、課題解決の場は日本の人材が活躍できる場でもあります。そして、地域の持続的で平和的な発展は、人や物、技術、文化の交流を促進し、日本の地域の発展にもつながると考えます。大学でグローバルな視点を持ち、課題意識を高めたうえで、開発途上国もしくは日本の農業・農村開発、地域振興、農業普及、アグリビジネスの現場に腰を下ろし、仕事力、生活力、課題解決力を身につけていけば、日本でも世界でも充実した仕事ができるようになります。開発途上国の農業・農村課題を、実践的に解決するABCDBCカンボジアの農村で営まれる米蒸留酒造について、農家とともに技術課題とその要因を明らかにし、改良技術を見出すことを目的に酒造試験を実施研究から広がる未来卒業後の未来像植物資源科学コース農学部学生の農村視察研修の実施(右下)品質向上のための改良技術普及と経営改善を目指し、酒造農家への技術研修を実施(左、右上)28

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