農学部研究紹介2018-2019
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発生を始めて間もないニワトリやウズラの胚の中で,将来精子や卵子になる運命をもった細胞,「始原生殖細胞」が増殖しながら赤血球と一緒に血流に乗って循環しながら最終的に生殖器官になるところにたどり着きます。そこで,オスでは精子に,メスでは卵子に分化していきます。そうだ!その血液を他の鳥類の胚に輸血すれば「鳶(とび)が鷹(たか)を産む」かもしれないね。こうやって,絶滅しそうで希少な鳥類を救い貴重で有用な鳥類を増やそう。小野珠乙教授1985年から信州大学農学部勤務。旧世界ウズラ(ウズラ,ヒメウズラ,等)と新世界ウズラ(コリンウズラ等)を用いて生殖細胞の移植と新たな実験動物作出のための育種繁殖に関する研究.手作りの機材豊富。ウズラ初期胚の血管から始原生殖細胞を含む血液を採血して別のウズラに輸血して,ニワトリの卵殻で培養するニワトリの卵から生まれた生殖細胞キメラのウズラが成熟して,導入されたドナー由来のヒナが生まれる鳶が鷹を産む・・・か?A black hen lays white eggs自己責任が伴いますが自由な雰囲気で,陽気な研究室メンバーであふれています。卒業生はさらに大学院に進んだり,専門にとらわれず,あらゆる方面の社会人としてキャリアを積み上げています。鳥類始原生殖細胞の同種間移植・個体復元はニワトリとウズラで成功しています。このことにより,動物を継代繁殖によらずに,始原生殖細胞の凍結保存⇨・移植⇨・次世代発現により,植物種子の感覚で家禽の種保存・復元ができる道筋が開けました。同一目に属する近縁種への細胞移植による次世代発現が可能となれば,希少種,貴重品種への応用の道が広がります。まさに畜産学がリードすべき重要な課題です。動物発生遺伝学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像動物資源生命科学コース12動物生体機構学研究室(LaboratoryofAnimalFunctionalAnatomy:LAFA)は、動物解剖組織学の研究室です。「食べる」をキーワードに、様々な染色方法を駆使し、光学顕微鏡・走査型共焦点レーザー顕微鏡や電子顕微鏡などを武器に、ミクロの世界へ探索の旅に出かけています。その旅の中で得られた一枚の写真が世界を変えるかも知れないと信じながら。生物界のフォトジャーナリスト、それが我々解剖組織学者です。現在、消化管の内分泌細胞に焦点を当てて、研究を行っています。消化管には無数の神経細胞と内分泌細胞が存在しています。消化管は、食物の消化・吸収を行うだけではなく、「第2の脳」でもあり最大の内分泌組織でもある訳です。また、粘膜付随リンパ組織を発達させたリンパ組織でもあります。消化管における神経-内分泌-免疫系のクロストークを解明できれば、「食べる」ことにより、血糖調節や粘膜免疫などの生体機能を制御することが可能になるかも知れません。また、新たな機能性食品の開発にも繋がる可能性を含んでいます。目標を定め、その目標にたどり着くための方法を選び、そこから得られた結果を考察し、ひとつの結論を導き出す。その結論から次の目標を定める。こうした理系の思考回路を身に付けられる様に指導しています。平松浩二教授製薬会社勤務を経て、1991年より信州大学農学部勤務。神経系、内分泌系及び免疫系のクロストークについて、解剖組織学的手法を駆使して研究を行っている。一枚の写真が世界を変える!?生物界のフォトジャーナリスト、それが解剖組織学者!!ニワトリ小腸における基底顆粒細胞の透過型電子顕微鏡像.(写真一枚or複数枚組み合わせ)ニワトリ回腸の基底顆粒細胞におけるGLP-1(緑色蛍光)とニューロテンシン(赤色蛍光)の共存(黄色蛍光).動物資源生命科学コース動物生体機構学研究室研究から広がる未来卒業後の未来像

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