大学概要2017
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わたしたちが注目するのは、①地球の水の97%強を占める豊富な海水、②資源採掘に伴い発生する随伴水、③湖沼や地下にある塩分を含んだかん水、の三つです。ナノカーボン製の水分離膜で、脱塩、物質分離が可能になれば、海水の淡水化が広く一般的になるだけでなく、随伴水の処理や、かん水の淡水化および有価物の回収が可能になると考えられています。高分子を用いた従来のRO膜は日本企業が世界シェアの大半を占め、日本の“お家芸”として有名ですが、高圧ポンプのエネルギー消費が大きくコスト高になるなど、開発途上国に普及させるには課題がありました。信州大学が得意とするナノカーボンを使った革新的なRO膜が実用化されれば、開発途上国などでも海水淡水化が“使える技術”となって、水不足の解消につながる期待があります。すでに有力な膜の候補が発見され、さらに性能を高める努力が行われています。プロジェクト目標を達成するためには、日本の企業や大学などの研究機関が持つ世界屈指の技術を融合させていく必要があります。このためナノカーボンの研究で知られる信州大学の遠藤守信教授のチームに加え、物質・材料研究機構、理化学研究所、海洋研究開発機構、日立製作所インフラシステム社、東レ、昭和電工、北川工業、トクラス、栗田工業などから最先端の研究者・技術者が参画し、オールジャパン体制で取り組んでいます。わたしたちが注目する三つの水源将来ビジョン実現のためのキーテクノロジー産学官のオールジャパン体制でプロジェクトを運営信州大学など研究機関が持つ革新的な炭素素材・繊維素材の研究成果と、長野県などの企業が持つものづくり技術を活かし、産学官連携で取り組むのが、最長9年間にわたる国家プロジェクト「世界の豊かな生活環境と地球規模の持続可能性に貢献するアクア・イノベーション拠点(COI)」です。このプロジェクトは、信州大学、日立製作所、東レ、昭和電工、物質・材料研究機構、長野県が共同提案し、2013年10月に全国12か所(現在は18か所)の拠点の一つとして採択されました。その活躍の中核施設となるのが、長野市若里の長野(工学)キャンパス内にある信州大学国際科学イノベーションセンター(AICS)です。ここでは、2030年に世界人口が80億人を超え、各地で水不足が予想される将来を見据え、「世界中の誰もが十分な水を手に入れられる社会」の実現を目指し、イノベーションを生み出す試みが着々と進められています。海 水【提案機関】信州大学 日立製作所 東レ 昭和電工 物質・材料研究機構 長野県【COI-S(サテライト拠点)】海洋研究開発機構(JAMSTEC)【COI-S参画機関】(平成29年6月現在〈順不同〉)ソニーコンピュータサイエンス研究所 中央大学【参画機関】(平成29年6月現在〈順不同〉)理化学研究所 高度情報科学技術研究機構 北川工業 トクラス 栗田工業随伴水かん水17

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