H29_繊維学部_研究紹介
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教員紹介堀江研究室では、植物が高塩濃度環境(塩ストレス)から身を守るための仕組みを、分子生物学、分子遺伝学、生理学的実験手法を取り入れながら紐解く研究を行っています。塩ストレスは、世界農業において農産物の収量を著しく減少させている頭の痛い問題です。気候変動に伴う土壌の塩類化が、世界の農地で近年激しく進んでいます。世界人口が増加を続ける傍ら、日本では耳慣れない“塩害”により、近未来の食糧生産が脅かされています。塩害地での農産物収量増産を可能とするために、イネを中心に耐塩性穀類を作出するための技術開発を目指しています。幸いにも私たちの暮らしは、年々より快適になって、食べ物に苦労する事もありません。しかし、一方で化石燃料の大量消費を基盤とした発展のツケが、今我々人間社会に重くのしかかってきています。植物基礎科学から得られた知識をうまく利用する技術があれば、近未来に危惧されている、食糧・エネルギー問題を回避するための、重要な一要素となるのではないかと考えています。これまで植物に関連する種苗会社や製紙会社、あるいは浄水器関連の会社、食品会社や教員と幅広い分野に学生が巣立っています。気候変動を実体験している世代として、自ずと環境問題への意識を持って会社や進路を選択する傾向も少なからずあるようです。堀江智明准教授カルフォルニア大学サンディエゴ校研究員、岡山大学資源植物科学研究所特別契約職員助教等を経て、2010年より現職。研究分野は、植物分子生理学、および植物分子・遺伝育種学。研究から広がる未来卒業後の未来像三大穀類の一つであるイネやモデル植物シロイヌナズナを材料にして、植物の耐塩性の分子メカニズムの解明を目指しています。植物の耐塩性に不可欠であるNa+輸送体に焦点をあて、その輸送活性や生理機能を追求し、将来的には輸送体分子の機能を改変する事で耐塩性植物作出に繋げたいと考えています。応用生物科学科将来の食糧生産の一助となる耐塩性作物を作ろう!動物細胞の免疫を活性化する枯草菌由来成分の探索も進行中写真サイズ高さ4.35cm×幅3.6cm配置位置横15.3cm、縦2.85cm微細な変化も見逃さないように電子顕微鏡でも観察します写真サイズ高さ4.35cm×幅3.6cm配置位置横15.3cm、縦2.85cm教員紹介枯草菌(納豆菌の類縁菌で産業的にも重要な細菌)は古くから研究されている土壌細菌であり、病原菌から植物を保護したり、有機物の堆肥化や汚水の浄化などに役立っています。また産業面でも、酵素およびビタミン類、抗生物質等の有用物質生産に利用されています。山本研究室では、以前より枯草菌のゲノム解析(国際共同研究)に携わってきました。現在も、枯草菌が保持している約4,100遺伝子が担っている機能を解明するために、国内外の研究室と連携しながら、より詳細な研究が進行中です。このような研究を通して、枯草菌を一つの重要な微生物資源ととらえ、その理解を深めるとともに、さらなる活用に向けた取り組みを進めています。山本研究室では、枯草菌が持つ潜在能力を最大限に活用するために、細胞表層を修飾するテイコ酸ポリマーが担っている機能の解明や、分泌タンパク質がどのような機構により正しい位置に局在化されるのか等について研究を進めています。将来的には、類縁細菌が持つ遺伝子資源の有効利用や、病原性細菌の効率的な防除システムの構築等に応用できる技術の開発を目指しています。卒業後は食品関連会社や製薬会社に就職するケースが多くなっています。また、研究を通して得られた知識や経験を発展させて、国内外の研究機関でさらに研究を続けている人もいます。その他、行政機関や学校教員として、大学で学んだ知識を社会に広める立場に進むケースも見られます。山本博規准教授信州大学繊維学部助手を経て、2007年より現職。研究分野は、細菌細胞で機能している分子の性質を調べる微生物学や、枯草菌等の細菌が持っている潜在能力を活用するための応用微生物学。細胞表層を修飾するポリマー成分を変化させた場合、細胞にどのような影響が見られるか、蛍光顕微鏡等で観察しています研究から広がる未来卒業後の未来像応用生物科学科微生物資源の有効利用を目指す~枯草菌が持つ潜在能力の解明と応用~57

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