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07信州の特産「寒天」の搾りかすはもとは海藻、自然素材!長野県特産の高原野菜の広大な農地は夏には信州を代表する美しい風景ですが、強風が吹く春の訪れの頃に、その面影はまったくありません。乾燥した強風が、畑の地表の細かな土をさらい、砂埃として舞い上げ、砂塵が辺り一面に吹きすさび、たった数メートル先の車の姿さえ見えなくしてしまいます。この「砂塵被害」は、関東甲信地方の畑作地域で見られ、2月から5月下旬頃まで続きます。農作業、生活面への影響のほか、優良農地の表土減少といった問題も引き起こしています。長野県では、塩尻市から、朝日村、山形村を経て松本市に至る高原野菜の畑が連なる「サラダ街道」と呼ばれるエリアで、以前から深刻な問題となっています。この現象の大きな原因は、その土地の土壌特性にあります。関東ロームや信州ロームと呼ばれる火山灰土は、とても細かな砂の粒子を含んでおり、乾燥しやすい性質を持っています。このため、強風が吹くと飛散しやすく、砂塵となって舞い上がります。これまで、「ネットで覆う」とか、「ムギを植える」などの対策が講じられてきました。しかし、ネットで覆うことは、労力と材料費が大きい反面、効果が薄いといわれていま信州の美しい田園風景が一瞬で異界に変貌する!す。他方、ムギを植えるという抑制方法はムギが生えているうちはある程度の効果があったそうです。しかし、もともとはレタスなど別の作物の畑であるため、その作付けの前に砂塵防止用に育てた麦を土中にすき込んでしまう必要があります。そのため、すき込んだムギが分解するまでの約1ヶ月間は作付けができず、その間は結局砂塵被害が出てしまい、抜本的な解決には至っていませんでした。そこで、新たに鈴木准教授が開発したSTOP!砂塵被害特許特集①「寒天搾りかすを活用した砂塵抑制資材」信大特許信州TLO映像制作コラボVol.1Patent of Shinshu Univercity長野県松本平の「サラダ街道」と呼ばれ、通常は美しい田園風景も砂塵が吹き荒れるとこのとおり。対向車すら見えない危険な状態が続く。※1)平成29年度中小企業知的財産活動支援事業採択実験協力で寒天の搾りかすを供給いただいている松木寒天産業(株)の松会の役に立つ、それも廃棄コストがなくなるのなら願ったり叶ったりです」。取信州大学研究シーズを技術移転する(株)信州TLOは、特許技術の「見える化」として試作と動画制作に取り組み中※1)で、信大NOWもこの「特許」関連の映像制作に合わせて特集を組んでいくこととしました。このたび映像制作の第一弾となった、農学部の鈴木純学術研究院(農学系)准教授が生み出した「寒天」の搾りかすを活用した、砂塵の飛散・風食防止と土壌の改良を同時に実現できる特許を紹介します。関東甲信地方の畑地周辺で多くみられる砂塵は、農作業はもとより、生活面や交通安全の面で深刻な問題となっていますが、その対策についてはどれも抜本的な解決には至っていません。鈴木准教授が生み出した長野県の特産品「寒天」の搾りかすを活用した砂塵の抑制方法は、まったく新しい対策技術です。(文・柳澤 愛由)

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