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地域の高校生に届11「たとえ仮の状態でも、やってみよう、という思いを大事にしたい…そんな思いを込めて、カリカリブックス(仮)と名前を付けました。あと、高校生が『カリカリ行こうよ!』って言ってくれたら、面白いなと思って(笑)」。穏やかな口調でそう教えてくれた“店長”の増川千晶さん。現在、信州大学農学部の植物資源科学コースに所属する3年生です。「カリカリブックス(仮)」があるのは、伊那市商店街の一角。中央の机で勉強してもよし、おしゃべりもよし、読書に没頭してもよし、置かれている本は購入することもでき、高校生に限らず誰でも立ち寄ることのできる自由でくつろげる空間です。「高校生たちに届けたい本を置く古本屋」。そのコンセプトが生まれた背景には、増川さん自身の経験から生まれたある思いがあったようです。増川さんは北海道の出身。高校時代は勉強、勉強の毎日で、本を読むことも少なく、学校の帰り道でも参考書を開き、周囲の景色に目を留める余裕すらないほどだったといいます。決して、読書家だったわけではないという増川さんが、「本」のさまざまな魅力を知ったのは今から2年前。信大生になったばかりの時に「ALPS BOOK CAMP(アルプスブックキャンプ)」という本のイベントで、ある本屋さんの出店を手伝い、そこの店長に勧められた一冊の本がきっかけでした。「その本は『計画と無計画のあいだ』(三島邦弘著/河出出版/2011年)という本で、これまで手に取ったことのないジャンルのエッセイ本で…。でも、たとえ仮の状態でも、『やってみること』の大切さを知りました」。また、その時に交流した方たちのエネルギッシュな行動力や考え方に、大きな影響を受けたといいます。さまざまな人との出会いと交流の楽しさを知った増川さんは、松本キャンパスに通っていた1年生(※1)のときにも「まつもと空き家プロジェクト」を立ち上げ、空き家をリノベーションし、異世代が日常的に交流できる空間を作るなど、積極的に活動していました。その後、2年生になり、伊那キャンパスに移った増川さんは、「自分が暮らす伊那で、もっといろんな人が立ち寄れる交流空間を作ってみたい」と考えるようになったといいます。その時に思い出したのが、アルプスブックキャンプでの「本」を通じたさまざまな体験でした。「本って、本当にいろいろな出会いを作(文・柳澤 愛由)「仮」の状態でも、とにかく始めてみる高校生の頃の自分にも伝えたい出会いの楽しさ、大切さ信大生は県外出身者が7割以上ですが、地域に根差してユニークな活動を展開する学生たちもたくさんいます。「飛べ!信大生」は、そんな独創力あふれるパワフルな学生たちにフォーカス!第1弾は、信州大学農学部3年生の増川千晶さんに登場いただきました。増川さんは、伊那キャンパスの地元、市内の商店街の空き店舗をリノベーションし、今年2月に古本屋「カリカリブックス(仮)」をオープンしました。「地域の高校生たちに届けたい本を置く古本屋を、とにかく(仮にでも)始めてみよう」という独自のコンセプトで開店。資金はクラウドファンディングで集め、現在、商店街の人たちの協力をいただきながら運営をしています。オープンから約半年、その経緯と現在の思いを、“走りながら行動する”増川さんに伺ってきました。寄付してくれた人の直筆コメントが入った本。本を通じた出会いを作るユニークな仕掛けのひとつ。古本屋
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