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08食農産業は、日本の主要産業のひとつです。特に長野県は、基幹産業である農業を軸とした産業の発展が喫緊の課題です。しかし、農業従事者の減少や高齢化、さらに温暖化といった自然環境の変化による気象条件の不安定化など、食農業分野が抱える課題は多岐にわたります。また超高齢化社会を迎えている日本において、健康や医療も重要なテーマになっており、機能性を重視した食品や加工技術の開発は、「長寿県」といわれる長野県では特に、高い期待が寄せられている分野です。そうした中、工学部が中心となり平成25年に設立されたFAID(食・農産業の先端学際研究会)を核に、さらなる学際的研究に取り組むため、今回誕生したのがCAFIです。これまでFAIDでは、工学部の研究者と、地域の企業・団体との産学連携により様々なプロジェクトを遂行してきました。農業や食品加工に関わる分野に、工学的知見や技術を導入する「工農連携」に取り組むことで、食農産業にイノベーションを起していくことが目指されてきたのです。こうしたFAIDの取組みを踏まえ、CAFIでは農学、工学の研究者だけでなく、さらに、医学、繊維学、人文、社会学の研究者が名を連ねました。これまで積み上げてきた研究をさらに幅広い学際的な研究に落とし込んでいくことで、食農産業に関わる「知の集積と活用」を進めていく研究センターだといえます。「FAIDによって、食農産業に関わる大学シーズは確実に高まったと思います。しかし、これまではそれぞれの研究者が個々に研究を進めていた傾向もあり、これからはCAFIで、より学際的な融合研究に取り組み、信州という地域に特化した産業をさらに強化させ、総合力で食・農・医産業のイノベーションを起こしていくことが、大きな目標です」と、CAFIのセンター長を務める天野良彦学術研究院(工学系)教授は抱負を語ります。CAFIは、①生産技術研究部門の下に、栽培技術研究グループ、ロボティクス研究グループ、②高付加価値化研究部門の下に、高機能食品研究グループ、高度食品加工プロセス研究グループ、食の消費社会学研究グループが存在します(概念図参照)。①生産技術研究部門は、栽培現場での技術やその応用を担う部門。②高付加価値化研究部門は、食品の機能性や付加価値を追求する部門です。①生産技術研究部門は、作物の基礎研究や品種改良といった基盤となる農学分野の研究はもとより、農業分野でのIoTの活用、工学技術導入などをプロジェクトテーマに挙げています。省力化という観点では、農作物に対する効率的な収穫を実現する「収穫ロボット」は需要も高く、その実用化が望まれています。しかし、まだまだ農業分野における自動化技術は限定的です。千田有一学術研究院(工学系)教授は、これまでホウレンソウやレタスなどの収穫ロボットを開発してきました。CAFIでは、こうした既存研究を基盤に農業分野における自動化技術の開発に引き続き取り組んでいきます。②高付加価値化研究部門では、食品の機能性や有意性を持った付加価値のある高度食品加工技術の開発から、伝統的な信州の食から導き出される有用物質の抽出や信州オリジナルの保健機能性食品、生活習慣病・癌などの予防法の開発に至るまで、「医」「食」を横断したアプローチも進めます。また、多様化する消費者ニーズの中、消費者心理の把握のために、人文社会学からの視点も取り入れていきます。このような食農分野における信州大学のシーズを分野横断的に育んでいくことで、専任人材の育成、さらには先端的な農業経営モデルの構築につなげていくことも目標のひとつです。「食農産業のイノベーションに資する技術は、いろいろな所に転がっています」と天野教授は指摘します。次世代的な農業技術や食品加工技術の開発を行うことで、食農産業の可能性を広げ、戦略的な発信をし、「地域発」の食農産業イノベーションの創出を目指します。食農産業で活かす大学シーズ。これまでの取り組みとビジョン最先端技術の導入で農業に新たな視点を「地域発」の食・農産業イノベーション高度食品加工プロセス研究グループ●酵素の活用技術●新食品加工のプロセス技術高機能食品研究グループ●機能性食品の疾病予防・治療への応用高付加価値化研究部門栽培技術研究グループ●周年収穫栽培技術●栽培環境制御技術●再生可能エネルギー●農産物の規格化ational Research Centerricultural Food Industry業イノベーション研究センターフェイド

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