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このプログラム、一見和気あいあいの楽しい研修旅行であるかに見えるのですが、実は波乱の日々だったそうです。渡航前の準備期間は、わずか数ヶ月。それまでに各キャンパスにまたがるメンバーでプレゼン内容を決め、英語でのスピーチを完璧にしなければなりません。23名のメンバーは、①長野県のことを紹介する「NAGANOグループ」、②日本の伝統文化などを紹介する「NIPPONグループ」、③日本の「カイゼン」活動について紹介する「KAIZENグループ」、④パフォーマンスを主体にした「ORGANICグループ」の4グループに分かれ、限られた時間の中、日本の魅力を発信すべくテーマを練り上げていったといいます。例えば、KAIZENグループは、針が不要の書類止め具(針なしステープラー)や、人工衛星のパネルにも利用されている日本独自の折り紙文化を活かし開発された「ミウラ折り」等を例に、「カイゼン」という行為が日本のものづくりや企業文化につながっていることをテーマにしました。こうして学生達の努力は続きましたが、努力だけでは認められないのがこのプロジェクト。アメリカでの生活が長い引率教員の藤田あき実学術研究院(工学系)講師は、課されたミッションに対して徹底的に成果を追求することをメンバーに求めました。渡航直前であっても、厳しい指摘が相次ぎ、学生達は四苦八苦。寝る間も惜しんで日本式「カイゼン」さながらにプレゼン内容の見直しを続けたそうです。全体のチームリーダーを務めた工学部4年(派遣時3年)の田中規詞さんは、「ぎりぎりの努力を続ける中で、チームをいかに1つにまとめていくか悩みました。メンバーの安心した顔をみた時が、人生で一番ほっとした瞬間でした」と振り返ります。現地でも受け手の反応を見ながら内容の修正を続け、結果、現地の学校の先生から「これまで来た日本学生の中で最もよいプレゼンだった」という評価も頂けたそうです。「日本を発信し続けることのできるグローバル人材をいかに育成していくのか、それがこのプログラムの目的だと思いました。だからこそ荒療治を仕掛けました。必死に学び、考えた学生達はぐんぐん成長していったと思います。ここで身に付けた『発信力』、すばらしいと思います」と、藤田講師はこれまでを振り返り、学生達を称えました。報告会では、学生がキャンパスごとのグループ単位で帰国後の「アクションプラン」を発表。例えば、「発信力を高めること」を最大の目標にしていた工学部3年(派遣時2年)の大沼真実さんは、現在毎週図書館でEnglish Caféの実行委員を務めています。英語での発信力を鍛えつつ、留学生との交流の場も広げているそうです。また人文学部4年の六井知樹さんは、「多様性を正しく理解するため日系アメリカ人の歴史や、松本市での外国由来の人達について調査を始めました。その結果をポスターやfacebook、イベント等で発信していきたい」と述べ、多文化共生社会実現へ向けた活動に意欲を見せていました。信州大学田中清副学長(国際交流担当)・グローバル教育推進センター長は、「今後社会に出ていけば、否応なく多様な価値観の中に身を置いていくことになると思います。肌で感じた経験に勝るものはありません。今回の気づきを忘れずに、今後の人生に活かしていってほしいと思います。これからの皆さんに期待しています」と学生達にエールを送り、報告会を締めくくりました。アメリカという異国での挑戦だったからこそ、改めて日本と向き合い、学び、考えた学生達。日本と世界との関係、そして自らの可能性について様々な気づきを得たことでしょう。報告会を終えた学生達は皆、自信に満ちたはつらつとした笑顔を見せていました。「カケハシ・プロジェクト」はこれからが本番! 日本と世界、そして多様な人々との架け橋となって、羽ばたいていって欲しいと思います。渡航当日までプレゼン修正…波乱の日々!帰国後の様々な学びと気づき12帰国後の報告会では現地でのプレゼンの再現や学生達の今後の目標が語られた。皆はつらつとした笑顔現地の学生達と交流後、記念撮影現地でのプレゼンやその準備の様子。直前まで改善を重ねた。その作業は現地でも夜半にまでおよび終了後は皆、疲労困憊だったとか
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