第4回 信州大学見本市 知の森総合展2017 出展シーズ抄録集
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抗生物質の本質を理解して有用生理活性物質の探索研究に応用する放線菌の二次代謝産物に由来する有用生理活性化合物*放線菌は,抗生物質をはじめとする様々な二次代謝産物を生産することで知られており,産業的に極めて有用な微生物群です。現在までに発見された微生物由来の低分子生理活性物質(広義の抗生物質)の7割近くが放線菌の二次代謝産物であり,それらの中には,医薬,農薬,動物薬として実用化されたものが数多くあります。過去十数年のゲノムプロジェクトの成果からは,放線菌の二次代謝に関与する遺伝子の多くが潜在的に存在していることも判ってきました。以上の事実から,放線菌の二次代謝の仕組みを深く理解し,その潜在的な二次代謝能を引き出し活用することは,微生物創薬の研究を発展させる上での重要課題の一つと位置付けられています。保坂毅先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所代謝ゲノミクス部門(学術研究院農学系)准教授E-mail: thosaka@shinshu-u.ac.jp農学部応用分子微生物学研究室1928年のフレミングによるペニシリンの発見にはじまり,抗菌性を有する物質が微生物の二次代謝産物から次々と見つけ出されるようになりました。1940年代はじめには,ワクスマンが土中に棲む放線菌*の二次代謝産物から結核菌に効くストレプトマイシンを発見し,抗生物質という言葉が使われるようになりました。それから現在に至るまで,わずか70年余りの間に,様々な微生物の二次代謝産物から数多くの抗生物質が見つけ出され,我々人類はそれらから多大な恩恵を受けてきました。抗生物質の元来の定義は,微生物が生産し,他の微生物の生育を抑制する効果があり,動物に対して毒性が低い化学物質とされています。抗生物質と聞けば,当然のようにこのイメージが湧いてくると思います。一方で,「自然界において抗生物質は本来どのような働きをしているのか」,「微生物はなぜ抗生物質をつくるのか」,実はまだこれらに対しての明確な答えは見つかっていません。私達の研究室では,抗生物質に対するそれらの疑問に触れながら,代表的な抗生物質生産菌である放線菌*を主な研究材料として,基礎研究[二次代謝(抗生物質生産)の分子生物学的機構の解明,二次代謝活性化作用を示す抗生物質耐性変異(リボソーム変異)の分子生理学的特性の解明)]と応用研究[有用放線菌の発掘と創製(有用生理活性物質生産株の育種)]を展開しています。生産菌: Streptomyces griseusストレプトマイシン(抗結核薬)FK506(免疫抑制剤)ドキソルビシン(抗悪性腫瘍剤)Streptomyces tsukubaensisStreptomyces peuticusOHOHOOHOOOOOOHOHHStreptomycesavermetilisエバーメクチン(抗寄生虫薬)ライフサイエンス4ライフサイエンス7676
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