2017環境報告書
21/60

20現在の仕事私は現在、東洋大学社会学部社会文化システム学科で助教をしています。ここでは仕事である研究と教育について紹介させていただきます。私はインドネシアの農村で地域住民の生活を調査し、住民の視点から熱帯林保全と農村開発を考えるという研究を行っています。熱帯林の減少は地球の温暖化を引き起こします。熱帯林の保全は人類の課題といえます。しかし、熱帯林地域では森林を利用して生活している人々がおり、日本を含む先進国の森林保全という考え方を彼らに押し付けることがあってはなりません。住民を主体とした持続的な森林利用・保全の仕組みが求められているのです。また、農村開発は地域住民のために行われるわけですが、外部者が物資を支援したり、何かを作るだけで本当に貧困を解消できるのかよく考える必要があります。農村開発も地域住民が主体となって、地域の問題を理解し、解決策を模索できなければ、持続的な生活は達成できません。住民の生活を知り、住民の視点から熱帯林保全や農村開発を考える研究が重要なのは、以上のような理由からです。教育については私が担当しているプロジェクト型の演習講義「社会文化体験演習(国際理解分野)」の紹介をします。この演習の目的は、私たちの周りの身近な商品(モノ)に注目し、その商品の生産、流通、消費の実態を調べることで、私たちの生活と世界のつながりを知り、そのつながり方を問い直すことです。今年はエビに注目し、学生たちは日本国内でエビの消費・流通の実態を調べ、インドネシアのエビ生産地で、エビ養殖民の生活や環境問題の実態について調べる予定です。私たちの当たり前の生活が世界の環境問題や貧困などの問題につながっているかもしれない。そんなセンスを学生たちに養ってもらいたいと思っています。学部生時代の体験信州大学の学部時代は農学部森林科学科(現・森林・環境共生学コース)・森林環境学研究室が主催しているヴァンデルング(森林散策)によく参加していました。学生が主催し、地域の人々と森林を散策しながら、交流するという活動です。この活動に参加して、大阪で生まれ育ち、信州の大自然にあこがれてやってきた私と、信州で生まれ育ち、日ごろから森と関わる地域の人々では、森の見方や感じ方が大きく異なることに気づきました。この体験が「住民の視点から森林保全や開発を考える」という研究スタンスの原点になっているのかもしれません。現在の信大生へのメッセージ日本の林業の衰退の一方で、途上国から大量の木材を輸入している現状、食糧の輸入による日本の食糧自給率の低下と食の安全の問題、農山村の過疎化など、信州から日本、世界が抱える問題がたくさん見えてきます。そして、信州にはこれらの問題に対処しようと試行錯誤する人々の営みがたくさんあります。信州大学の学生の皆さんは信州から日本、世界の問題を感じ取って、信州の地元の人々に学び、問題解決に貢献できるように頑張ってもらいたいと思います。寺内 大左・てらうち だいすけ2006年信州大学農学部森林科学科卒業2008年東京大学大学院 農学生命科 学研究科 修士課程・修了2013年東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程・満期退学(2014年学位取得)2013年~2016年日本学術振興会・特別研究員PD2016年~2017年京都大学東南アジア研究所・研究員2017年4月~現在東洋大学社会学部社会文化システム学科・助教大学教員として環境問題に取り組む環境と生きる人づくり(OB・OGの環境活動)東洋大学社会学部社会文化システム学科 寺内 大左さん特 集伝統的な焼畑先住民の家屋インドネシアの貯木場清めの儀式中の子供たち(焼畑民の村にて)

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る