2017環境報告書
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19 私は、2011年に信州大学大学院工学系研究科環境機能工学専攻を修了し、メタウォーター株式会社に入社しました。メタウォーターは、上下水・再生水処理等の各種装置類、施設用電気設備等の製造販売、各種プラントの設計・施工・請負など、上下水道を中心に幅広く事業を展開する水環境分野のリーディングカンパニーです。私がメタウォーターに入社したのは、環境分野に密接に関わっている上下水道を事業としており、学生生活で培った環境マインドを如何なく発揮できると考えたためです。また、21世紀は「水の世紀」とも言われており、この分野で活躍することで社会に大きく貢献出来ると考えたためです。私は、メタウォーターの開発部門に所属し、主に下水汚泥残渣の有効利用技術の開発に携わっています。ここでの下水汚泥残渣とは、各家庭や工場から下水が排出されますが、その下水を処理し浄化する際に出る汚泥(泥状のもの)を指します。汚泥は水を含有しており体積が大きく腐敗も起こるため、脱水、乾燥、焼却などのプロセスを経て処分されます。最終処分場の延命化と資源の有効利用のため、現在汚泥から炭化物を製造し燃料利用する方法、汚泥を焼却して生じる焼却灰を土木資材等に利用する方法があります。しかし汚泥の燃料化(炭化物化)には、化石燃料量が通常の汚泥焼却と比較して著しく増加するという課題があり、一概に環境負荷を低減する技術とは言えません。一方焼却灰の土木資材利用では、焼却灰に含まれる成分(重金属等)が利用にあたっての環境基準(利用先によりますが)を上回る場合があり、課題となっています。そこで私は、下水汚泥の焼却方法を工夫し、燃料化と比較して低燃費で重金属を低減させ、吸湿性があり、細粒化した下水汚泥由来の機能性材料を製造する技術を開発しました。この機能性材料は、その吸湿性や粒度から汚染土壌処理工法の分散剤として採用され、2020年から2040年の20年間、秋田県発注のプロジェクトで使用されることが決まっています。私は前述のプロジェクトを通して、常に環境マインドをもって開発を行うことを心掛けました。それは、今自分が開発している技術は、本当に環境問題解決(エネルギー低減と物質循環促進)に繋がっているのだろうかという意識です。学生時代にはわかりませんでしたが、企業では利益や工程が優先となり、肝心の利用先の顔を見失いがちになることがあります。そんな時に、正しい答えを見つけ出し、踏ん張って頑張り抜くパワーは、エコキャンパスで培った環境マインドから生まれたものです。現在は上記とは別の廃棄物有効利用技術の開発に携わっていますが、今後もこれまでの貴重な経験を活かし、常に環境とユーザーの顔を意識した開発を行っていきたいと考えております。学生の方々は、今後社会に出て多種多様な仕事を行い活躍されることと思います。その時に、個人のパーソナリティーが仕事の仕上がりに大きく関わります。信州大学は、大学全体で環境意識を高める活動を行っています。そんな大学で学べたことを誇りに、環境マインドをパーソナリティーの一部にもって、社会で活躍して頂きたいと思います。下水汚泥残渣の有効利用技術開発の取り組み環境と生きる人づくり(OB・OGの環境活動)メタウォーター株式会社 太田 琢磨さん機能性材料製造試験の風景(汚泥処理試験)機能性材料製造試験装置 外観特 集太田 琢磨・おおた たくま2011年信州大学大学院工学系研究科環境機能工学専攻修了2011年メタウォーター株式会社入社

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