Shinshu University Social Responsibility Report 2016-2017
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SHINSHU UNIVERSITY SOCIAL RESPONSIBILITY REPORT 2016−20179信州の山々に囲まれた、清涼で緑豊かな、じっくりと物事を考えることのできる環境を活用し、独創性豊かな人材を育成します。また、環境保全・環境共生等に関する研究を推進し、それをもとに環境マインドを持った人材育成を系統的に行います。Green 地球規模で見た場合、使える水の量は限られています。このまま人口増加が続くと、安全・安心な水の確保はますます難しくなります。アクア・イノベーション拠点は2013年、「世界中の誰もが十分な水を手に入れられる社会」の実現を目指し、最長9年の国家プロジェクトとしてスタートしました。多様な水源から使える水を造り、循環させる「革新的な造水・水循環システム」を構築するため、信州大学が得意とするナノカーボン材料技術を活かし、オールジャパン体制の産学官連携のもと、脱塩性、透水性、ロバスト(頑強)性にすぐれた物質分離材料の開発と、それをプラントに組み入れるためのモジュール化・システム化を進めています。2016年には、Phase1(2013-2015年度)を対象とした中間評価が行われ、JSTからは「今後研究開発の加速が期待できる」などの意見が示され、総合評価「A」をいただきました。2環境マインドを持つ人材の育成信州大学では、環境に関する授業科目の整備や海外研修、環境マネジメントシステムの推進などを通じて、環境マインドを持った人材を育成しています。環境教育海外研修は、環境に対する取組について多様な視点で捉え実践する目的で2009年から実施しており、2015年までに31名の学生が、海外に出て環境課題を学修しています。2015年は4名の学生がフランスのラ・ロッシェル大学やボルドーのワイン産地を訪れ、現地の都市交通システムや化学製品を使用しないBIOワインなどについて学びました。また、研修で得た成果について広く学生に還元する目的で学内報告会も実施しています。2015年環境教育海外研修(フランス)帰国後に行われた学内報告会石油やガスの採掘時に産出される水を随伴水と呼び、大半は海洋に投棄されています。この随伴水を処理して再利用することも研究テーマの一つです。研究グループは、天然黒鉛から得られる膨張黒鉛を用いて、随伴水中に残る油分を限界まで減らす方法を開発しました。本方法とナノカーボン膜による処理を組み合わせれば、資源採掘に伴う環境負荷の軽減に加え、随伴水の効率的な再利用が実現します。実験に使用している国内産の随伴水カーボン科学研究所 遠藤守信 特別特任教授を中心とした研究グループは、脱塩用の逆浸透(RO)膜に使われている高分子材料に、ナノカーボン材料の一つであるカーボンナノチューブを特殊な方法で加え、ロバスト(頑強)性を持つ新しいRO膜を開発することに成功しました。信州大学に導入されたスーパーコンピュータを用いたシミュレーションでも、膜が優れた性能を示すメカニズムが次々に明らかとなっています。高分子材料にカーボンナノチューブを加えた複合材料のイメージ2016年6月、拠点をご視察され、遠藤守信 特別特任教授から説明をお受けになる天皇皇后両陛下(写真提供:長野県)プロジェクトが目指す未来「水」社会を表現したジオラマ1-1世界の豊かな生活環境と地球規模の持続可能性に貢献するアクア・イノベーション拠点(COI)1-2カーボンナノチューブ(CNT)を用いた高機能の逆浸透膜の開発に成功1-3膨張黒鉛による随伴水一次処理法の開発
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