信大NOW99号
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出口 大変でしたけどね。1年次に教養課程の単位を落とした人は、長野から松本まで通ってましたからね。なんでこんなに遠いんだろうって(笑)。井 地域貢献という点では、お米を日本から海外に輸出することは、日本の農家さんの役にも立っているのではないでしょうか。出口 そうですね。海外で農産品の販売をしていると、日本国内の農業とか、農政が気になります。今、作り手の高齢化や担い手不足、不耕作地など、いろんな問題で、国内の市場が縮小しています。その分を海外に市場を求めることによって、農業が活性化できればいいなと。私は北海道出身で北海道のお米のおいしさが分かっているので、北海道のお米を一番多く扱っていますが、二番目は長野県のお米なんですよ。大学1年目に松本で下宿していた時に、そこのおばさんがつくるご飯がすごくおいしくて、それが長野県のお米だったんです。自分の生まれた北海道と自分がお世話になった長野県ということで、そういう意味では地域貢献かなと(笑)。海外でも長野県のお米はすごく評価が高いんです。学長 私はほぼ毎日、長野県産のお米を食べてますよ。毎日だからそのありがたみを忘れていましたね(笑)。信州大学で身につくのは、課題を克服する精神力。井 出口さんには、どうにかなるじゃなくて、どうにかしてやるというチャレンジ精神がありますね。出口 難しいこととか、常識ではどうしようもないことに対して、どうしたら実現できるかを考えるのは好きなんです。この仕事を始める時も、業界の人からしてみると、海外では安いインディカ米が主流なので、日本の高いお米、しかも粘り気が強いお米は受け入れてもらえないよというような話はあったんですけど、どうしたら受け入れられるかを考えるのは楽しかったです。学長 自分の前にある壁を一つひとつ越えていくのは、自信になりますよね。強い心で挑戦をされているわけですからなおさらですね。出口 野外教育という自然の中での活動は、状況によってはサバイバルみたいなものです。それこそ雪上キャンプで零下20度の中、雪洞掘って雪の中に寝袋敷いて…。井 そんなことしたんですか。出口 信州というフィールドの中で育ててもらったので、ちょっとやそっとでは動じなくなりましたね。信州大学にたっぷりと対応力をつけてもらいました。学長 ましてや海外に行くと、日本の常識では通じないことが多いでしょう。対応力は大事ですね。井 出口さんのようなたくましい人が生まれて。たくましいメンタリティをお持ちの方が多いんじゃないですか、一緒に学んだ人は。出口 そうかもしれません。信州大学のホームページでも取り上げておられた山岳ランナーの山本健一さんとか、現役の山岳ガイドで活躍されている花谷泰広さんは、同じ学部のゼロ免課程のメンバーです。学長 山岳で培われた絆は強いですね。出口 はい。信州は冬が寒いので、それだけでも鍛えられます(笑)。冬場に布団から出なければいけないとか、灯油をガソリンスタンドまで買いに行ったりとか(笑)。井 銭湯の帰りに手拭いを回しながら帰ると凍ってしまうとか(笑)。学長 国立大学の中では、標高が一番高いところにありますから。何でも一番は大事です(笑)。出口 日本の大学の中で、いい意味でそんな経験できるところは他にありませんね。異文化交流キャンパスに、さらにグローバルが加わる。井 ところで、海外で活躍したいという志向はお持ちだったんですか。出口 海外で仕事をとまではいきませんが、生活をという気持ちはありました。私は実は大学は5年半かかっているんです。1年半休学をして3カ国に留学をしました。井 どちらへ?出口 中国と韓国とアメリカに行きました。外国の言葉はいつか役に立つ、時間のある時に海外で生活をしてみたいと、学生の時に留学をしました。学長 野外教育に加えて、海外留学ですか。またまたいい経験をしましたね。井 信大生らしいというか。じゃあ、ちょっと外国でも行ってくるかな、みたいな。出口 のんびりした感じですよ。学長 信大生を見ていると一見のんびりに感じますが、本当はいろいろ考えていて、しかもその経験が人生の役に立っていたりするんですよね。出口 私も学生時代に海外経験ができましたので、海外で仕事をすることに対してのハードルみたいなものは感じなくてすみました。学長 学生時代にこそ、多様な経験にチャレンジしてもらいたいし、留学生も増やしていきたいと考えています。出口 そのお言葉で安心しました。私の留学の件もそうですが、学生だからできるということがあるので、そういうことにはどんどん挑戦してもらいたいですね。学長 やはり異分野にふれることは貴重で、日本のことも知ってるようで知らないんですよ。でも異文化に触れると、もう一度日本を見直すことができる。それが重要なんじゃないかなと思います。それは一朝一夕にはなかなか分からないものですが、幸い信州大学は、全都道府県から学生が集まるので、いわば、北海道から沖縄までの異文化交流サークルなんですね。それが、信大の独創性を養う大きな要素でもあるのです。井 信大の独創力をグローバルに。出口さんに続け、ですね。今日はどうもありがとうございました。信州というフィールドで、厳しく育ててもらったので、ちょっとやそっとでは動じない、強さが身につきました。(出口)06

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