now98_web_k
8/20

齋藤 直人07次に介助しての歩行、最後は自立(独立)歩行。この介助から自立歩行の段階に至るレベルが、歩行アシストサイボーグ技術が一番真価を発揮するところだと思います。これさえあれば理想の自立歩行ができる。やはり信州大学が開発を進める生活支援のロボティックウェアcurara®(クララ)も同じコンセプトで開発されてきましたから、これをさらに進化させた形にするということです。また、世の中の介護ロボット類の開発に「体内埋め込み」という発想は少しはあったようですが、現実味はなく、空想の世界でした。ですから信州大学は、この理想でもあり、究極でもある技術開発に、正面から取り組もうということになりました。整形外科医として実際に体内に埋め込むことを考えると、バッテリーやモータが安全に機能するか、関節がきちんと動くかなど、きわめてハードルが高い研究開発プロジェクトであることを承知しています。各パーツの小型・軽量化・耐久性などはもちろん、スムーズな関節駆動方法の開発や生体親和性など人体との関連…課題は山のようにありますが、ひとつひとつクリアしていく覚悟です。―“体内埋め込み”という発想はどこから?また課題などについても教えてください記者会見でも質問が多く出ましたが、体内に何かを埋め込むということは、やはり一般的には怖いイメージがあるようですね。しかし実際の臨床では、骨髄内釘を埋め込むという手術は非常にポピュラーなもので、骨折などの処置として、整形外科では日常的に行われているものです。ですから、それにロボットなどの駆動技術で自立歩行するというニーズを加えたものが、体内埋め込み型のサイボーグ技術を発想した原点ということになります。これは応用できるな、と。よく、患者さんがリハビリをする際に言われるのですが、“歩けない方の歩行ニーズ”というのは通常4段階あります。最初は寝たきりの状態、次に挫位の状態(座ることができる)。その―新しいバッテリーの特徴を教えてください一言でいえば「液体から固体へ」でしょうか。革新的な蓄電池「全結晶型二次電池」を作る、ということです。電池には通常の電池(一次電池)と繰り返し使用できる蓄電池(二次電池)があるのはご存知と思います。これらは共に、液体電解質(電解液)を使っています。電解液を使用した電池は、ガスが発生し膨張したり、活物質と反応して性能が低下したりという課題があります。このサイボーグの仕組みを考えた場合、体内でこのような現象が起きたり、液体が漏れ出すなどということは、絶対にあってはなりません。このように「安全性」を追求すれば、必然的に「全結晶(固体)型」に辿りつきます。…しかし、このような電池の実現には時間がかかります。次々世代型とも呼ばれる所以です。今回のもうひとつの課題はパワーでしょうか。限りなく小型・軽量化していながら、人体を動かすため、大きな出力が必要となり、しかも長時間使用が可能…さらに耐久性の観点では、何回も充放電できる「サイクル性能」を格段に向上する必要があります。総合的に考えても、やはり「全結晶型電池」の実現が不可欠です。―ロボットの技術開発だけに限らない話ですねそうです。現在、金属空気電池(正極活物質に空気中の酸素を利用するアルカリ蓄電池の総称)も次世代型電池として研究されています。全結晶(あるいは全固プロジェクトのキーマンに聞く。サイボーグ技術でどんな未来を描くのか。近未来体内埋め込み型歩行アシストサイボーグプロジェクトは、先鋭領域融合研究群の4つの研究所の“融合”ユニットであることは先にお伝えしたとおり。この中でも、バイオメディカル研究所の齋藤所長(プロジェクトリーダー)、環境・エネルギー材料科学研究所の手嶋所長、国際ファイバー工学研究所の橋本教授の3名のキーマンの方々に、このプロジェクトにかける思いを聞いた。日本が世界をリードするイノベーションの象徴になるように革新的な蓄電池、全結晶型二次電池の開発が産業構造を変える(バイオメディカル研究所 齋藤所長)(環境・エネルギー材料科学研究所 手嶋所長)先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所長バイオテクノロジー・生体医工学部門長学術研究院教授(保健学系) / 博士(医学)1988年信州大学医学部卒業。同医学部附属病院医員。1996年同医学部助手。1999年同医学部講師。2004年同教授。2014年より現職。さいとうなおと

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る