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14大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授の滝沢智氏が、「世界の水危機と安全な水供給」と題して基調講演しました。滝沢氏は、東南アジアやアフリカ、オーストラリアにおける水道事業を巡る課題を紹介。人口増加や気候変動が水セクターにさまざまな影響を与える可能性にも言及し、解決策については「先進国の都市で使われている技術を持って行こうとしても、途上国の実情に合わないことがあり、それをいかに解決するかが課題」と述べました。続いて行われたパネル討論では、滝沢氏のほかに、栗田工業研究開発部の加来啓憲氏、マルコメ顧問の一條範好氏、信州大学の中村宗一郎理事、長野県経営者協会会長の山浦愛幸氏。さらに、プロジェクト側からサブプロジェクトリーダーの辺見昌弘・東レ理事、日立製作所インフラシステム社技術開発本部の大西真人・松戸開発センター企画部部長、信州大学の田中厚志教授(モデレータ)が加わり、計8人で議論を交わしました。パネル討論ではまず、モデレータの田中教授が討論の趣旨を述べ、各メンバーがそれぞれの「水」利用の将来像を発表。続いて、プロジェクトへの期待が表明されました。プロジェクト側の辺見サブプロジェクトリーダーら2人は、海水淡水化、随伴水処理、かん水処理、排水処理という、プロジェクトが想定する「水」利用の将来像を紹介。これに対し、栗田工業の加来氏は、複数の工場から排水を集め、用水、純水、超純水に処理して供給する事業を紹介し、「今後このようなケースは増えていくと予想され、高温の水を処理できるRO膜が開発されれば新たな需要につながる」と発言。マルコメの一條氏は、長野工場では味噌の生産のために一日1500トンの水を使い、排水処理をしたうえで放水している事例を紹介し、「RO膜により、排水中の有用成分を取り出すことができれば、新たな事業につながる」と期待を語りました。また、農学部長でもある中村理事は、灌漑による砂漠の緑化など、農業用水の分野でもプロジェクトの成果が生むインパクトは大きいことを指摘しました。山浦氏からは長野県の産業の歴史と水との関係が語られ、「将来的に研究開発型の産業を誘致していく必要があり、拠点の取り組みは大変ありがたい」と期待をこめました。モデレータの田中教授は「当初考えたより、「水」利用の将来から来る要望は多様で、何度もバックキャストを繰り返しながら、プロジェクトを進めていきたい。今後ともご協力をよろしくお願いしたい」と結びました。最後に、水資源の総合管理や再利用技術の分野の世界的なパイオニアで、プロジェクト発足当初から見守る、カリフォルニア大学デービス校名誉教授の浅野孝氏が登壇し、シンポジウムの総括を行いました。浅野氏は、アクア・イノベーション拠点への期待が大きいこと、さらにカーボン・繊維のグループから画期的な成果が出ていることを再確認したうえで、「すばらしいパネル討論だった。世界の水問題のどこに焦点を絞るのか、もう一回原点に返り、都市の中の水循環はどうあるべきか、実装の形について、どんな場面を想定するのか、今後もブレーンストーミングして欲しい」と呼びかけました。多様な社会実装の「形」をテーマにパネル討論浅野氏「もっとブレーンストーミングを」 各研究者の成果をまとめたポスターセッションが、シンポジウムと同じ会場内で開かれました。出展者は以下の通りです。(敬称略)≪COI拠点≫①カーボンナノチューブ・ポリアミドの複合膜による高性能、多機能性逆浸透(RO)膜の開発(信州大学・遠藤守信研究グループ)②膨張黒鉛(EG)による随伴水一次処理法の開発~環境影響が少ない資源採掘に前進(信州大学・遠藤守信研究グループ)③カーボンナノチューブ(CNT)とポリアミド(PA)の複合RO膜の分子動力学に関する研究~本学スパコンを活用した革新的なRO膜科学への展開(信州大学・遠藤守信研究グループ、高度情報科学技術研究機構)④プラズマ励起CVD法によるカーボン逆浸透膜の開発(物質・材料研究機構)⑤汎用性のあるセルロース高強度ゲル形成プロセスの発見~脱石油由来の水処理用部材に適用へ(信州大学・木村睦)⑥機能性無機結晶を用いた稀/重金属イオンの吸着除去による水浄化(信州大学・手嶋勝弥)⑦水やその他の物質と膜との相互作用を原子レベルで探る(理化学研究所)⑧疎水性カーボンナノ細孔空間中の水の不思議とその制御(信州大学・金子克美)≪COI-S拠点≫⑨「水」大循環をベースとした持続的な「水・人間環境」構築拠点(海洋研究開発機構、東京大学、中央大学、ソニーCSL、宇宙航空研究開発機構)≪萌芽的研究≫⑩単結晶を用いた固液・金属分離技術の開発~再利用可能なサファイアフィルタをいた金の回収(信州大学・太子敏則)⑪複合・改質高分子膜を利用した膜分離プロセス~有機溶媒回収、有価金属分離、脱塩(信州大学・清野竜太郎)⑫電磁気的手法を用いた海水淡水化プラント用非接触塩分濃度計の基礎検討(信州大学・曽根原誠)⑬多孔質ガラス導光路を備えた水処理用触媒反応システムの開発(信州大学・宇佐美久尚)⑭ソノプロセスによる随伴水の前処理技術の開発~超音波による油水分離の促進効果及び有機物分解反応(信州大学・金継業)≪参考出展≫⑮ナノテクロジープラットフォム事業の紹介(科学技術振興機構) ポスターセッションを同時開催がいかん

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