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12安曇野市三郷一日市場東村の道祖神祭神社の御柱祭会場の様子は、子供二人が祭りの前日に川で身を清め、奥社で一晩を神様と共に過ごして神の子となった後、上の柱松と下の柱松にそれぞれ競って火をつけるというもの。上の柱松が勝てば、その年は天下泰平。下の柱松が勝てばその年は五穀豊穣になると言われている。かつては毎年行われていたというこの祭り、今では人手不足を理由に、3年に1度しか行われなくなっているという。各地で行われている祭りの様子を見たパネリストらは、「自分の地域の祭りしか詳しく知らなかったが、こうも違いがあるとは」と口々に感想を漏らした。それを受け、笹本教授は「これまで知らなかった、地域ごとの祭りの違いや特徴が見えてきた点は、今回のフォーラムの大きな成果だ」と強調した。また長野市立博物館の小森さんは、「祭りの見物人の存在も、祭礼を理解するうえでカギとなる」と指摘。「かつては神様を喜ばせるために行われていた祭りが、時を経るにつれ、見物人の目を引くことの方が重要視され、衣装がきらびやかになったり、余興がメインに行われたりと、イベント化してきた」と、祭りを見守る周囲の人々の存在によって、その様子が変化してきたという点についても言及した。こうした各地の映像を検証する中で、その変化や多様性がつまびらかにされると共に、担い手の減少によって、祭りそのものの存続が課題となっている地域が多いことも浮き彫りとなった。あづみ野テレビの織部夏子さんは、「かつては400以上あったとされる道祖神祭りも、今は17しか行われていない。今後若い世代にどう祭りを引き継いでいけるかが課題。未来に継承していくためには、地域の人や、私たち報道機関が祭りをより魅力あるものに変え、見せていくことが重要」と力をこめた。飯田ケーブルテレビの平澤徹さんも「多くの祭りで共通しているのは子孫繁栄を願うものであるという点」と述べたうえで「子どもというのは目に見える形での未来。今という時代だからこそ力を入れて祭りを継承していくべきではないか」と意見を投げかけた。子孫繁栄、五穀豊穣、天下泰平―祭りには、人々が豊かに暮らすための様々な願いがこめられている。各地の祭りは、世代を超え、多くの人々の祈りを載せ、今に至るまで継承されてきた。こうした地域の祭りについて生き生きと解説するパネリストらの様子に、「皆さんが自分の地域の祭りにどれだけ誇りをもっているかが伝わってくる」と笹本教授。「祭りは、人々の『祈り』であると同時に地域の『自信』だ」と力強く語った。また笹本教授は、祭りは防災の観点から見ても重要な役割を持つ点を指摘。祭りが行われる毎に横のつながりを持ってきた地域では、災害が起こった場合に、人と人とがつながる力を持っているからだ。独自文化継承の観点からも、地域の連携という観点からも、祭りというものが地域に果たす役割は大きい。「今、祭りの継続が困難になり、多くの重要な祭りが消えつつある中で、私たちは過去に対しどう責任をとり、この先どうやって未来を作っていくのかを考えなくてはいけない。より良い未来を作るために皆で頑張りましょう」と会場に訴えかけ、当フォーラムを締めくくった。7年ぶりに各地で御柱祭が開催される今年。大学や博物館の研究者と、地域の現場で祭りの姿を追うケーブルテレビ各局のスタッフを中心に、異なる立場の人々が集まり、祭りについて論じあうことで、祭りの持つ役割や、果たした功績、ひいては祭りが作り出す地域の未来について、あらためて考えさせられる機会となった。担い手減少により課題となる祭りの継承祭りが作り出す地域の未来諏訪だけじゃない長野県各地に伝わる“御柱”を映像とともに検証するフォーラム信州大学 × 日本ケーブルテレビ連盟信越支部長野県協議会連携協定第4回連携フォーラム我がふるさとの
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