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09(学部)から分離し、3学域10学系の学術研究院を設置したのもその一環でした。先鋭領域融合研究群は信大改革の牽引車としての役割も果してきているのです。―若手研究者育成で特筆するべきことは?2016年1月6日に、信州大学で初のライジングスター(Rising Star=通称RS)認定教員の辞令交付式が行われました。RS教員は、先鋭領域融合研究群に配置した新進気鋭の若手研究者の中から、特に優れた人を選び、その分野でのリーディングスペシャリストへと成長してくれるよう、研究資金や研究時間の確保や業績評価の面などで優先的に支援する制度です。ナノファイバーを大量に創出するエレクトロスピニング法を開発し、ナノファイバーの様々な活用法を開発している金翼水(キムイクス)准教授(国際ファイバー工学研究所)。多能性幹細胞(iPS細胞)を使った再生医学を社会実装の一歩手前まで進めている柴祐司准教授(バイオメディカル研究所)。そして、信州大学が生んだ健康法=インターバル速歩の定着率や効果を遺伝子や心理指標など様々な視点から掘り下げ、超高齢社会における運動を核にした予防医学の確立を研究する増木静江准教授(バイオメディカル研究所)。この3人のRS教員の誕生こそ、先鋭領域融合研究群の2年間の歩みを象徴するものだと思います。―研究の選択・集中・融合の成果は?先鋭領域融合研究群は、ここ2年間、社会が直面する困難の克服と新しい価値の持続的な創出を実現するため、従来の思考の枠組みと専門の枠を超えた俯瞰力と想像力で、新たな課題に取組む研究環境の整備を進めてきました。若手中心の専任研究者の集中、外国人特別招へい教授との協働、学系や分野を超えた融合と協働の体制構築などを進め、フロンティアファイバー、バイオメディカル、ファイバー、ナノカーボン、水処理、エネルギー貯蔵デバイス、複合材料、蓄電池、燃料電池、山岳科学などの領域で優れた成果を生んでいます。―注目するべきプロジェクトは?例えば、体内埋め込み型歩行アシストサイボーグプロジェクトや、体に装着したまま血圧などを長時間にわたり測定できるウエアラブルバイタルサイン測定システム開発プロジェクトなどは、近い将来に社会実装が可能な優れた取組みです。文科省の革新的イノベーション創出プログラムに採択されているアクアイノベーション拠点(COI)と連携した水資源循環技術の開発研究もナノカーボンやファイバーなど信州大学の強みを活かした世界的な研究です。その他、枚挙に暇がありません。―研究成果の教育体制への反映は?こうした先鋭領域融合研究群の研究成果を信州大学の教育体制に反映させるために、学科横断の教育プログラムを実施したり、2015年度には理学部と農学部の改組を行ったりしました。2016年度には工学部と繊維学部、理工学系研究科と農学研究科(修士課程)の改組も予定しています。そもそも、教員組織を、教育組織―先鋭領域融合研究群の新たな挑戦は?先に述べたような成果を踏まえて、新たな歩みを始めなければならないのですが、5つの研究所での、またそれら相互の、「クロスブリード」(領域・学系を超えた融合と協働)による発展を通じてこれまでの研究を世界に誇る、研究をパワー先鋭領域融開設3年目。先端研究の推進と若手研究者の育成象徴は3人のライジングスター次代クラスター研究センターの設置へ理事(研究、産学官・社会連携担当)、副学長先鋭領域融合研究群長2005年4月信州大学農学部教授、2010年2月同農学部長、2011年4月同総合工学系研究科長(2013年3月31日まで)、2012年6月同副学長、2014年4月同学術研究院農学系長、2015年10月同理事(研究、産学官・社会連携担当)、副学長、先鋭領域融合研究群長―中村 宗一郎 新研究群長に 中村 宗一郎なかむらそういちろうPROFILEこれまで紹介してきた歩行アシストサイボーグプロジェクトに象徴される、信州大学の特色ある研究の推進を重点施策とする先鋭領域融合研究群。まずは5つの研究所が、融合的研究を進めているが、組織を開設してから早くも3年目を迎えた。開設当初より群長を務めた濱田州博(くにひろ)現学長の後継として、二代目の研究群長を務める中村宗一郎理事・副学長に、同研究群の時点の到達点と今後の展望について聞いた。(文・毛賀澤 明宏)

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