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ねらいはどこにあるのでしょうか。学長:新しい何かを生み出すには、別の何かと融合させることが必要です。だから、ひとつの専門性を追求するだけではなく、さまざまな人と接して多様な考え方を吸収してほしいんですね。これからは深さだけでなく、横の広がりが必要な時代です。1年次には他学部の学生としっかり交流する。そのときの出会いが、その後の研究や人生に大きく影響したという人も少なくありませんよ。藤島:野村さんも、工学的な専門性を追求しながら、ポケモンを遊びで使おうという文化的な発想もお持ちで、学びの多様性が生かされている気がします。藤島:ポケモンGOは、スマホを持って家にこもっている人を外に引っ張り出したという、人とスマホの関係を変えた面も注目されました。野村:それはナイアンティックという会社自体が持っていたビジョンです。ナイアンティックは、ジョン・ハンケという今のCEOが立ち上げた会社ですが、はじめから「人を外に連れ出したい」というビジョンを持っていました。僕もそれに共感して参画したんです。学長:ナイアンティック社にはもともと地域貢献の理念があったわけですか。研究でも仕事でも、外に出ることは大切ですね。信大も、地場企業との結びつきを強化するなど、積極的に地元との交流を図っています。調査があると、信大はいつも大学の地域貢献度NO.1なんですよ。(※1)野村:東北支援など地域と連携した活動は以前からしているんですが、ポケモンGOの場合、ポケモンをつかまえるためにいろんな地域に出かけるので、経済効果が高いとも言われています。ゲームだけにとどまらず、ついでに観光したり、地元のおいしいものを食べたりなど、別の活動が伴うんですね。ポケモンGOをきっかけに、地方の魅力にも気づいてもらえるといいなと思います。藤島:被災地の復興にも、ポケモンGOが一役買っているわけですね。今のお話は、信大が掲げる3Lのひとつ「ローカル」に関係するとともに、3Gのひとつである「ジェントル」ともかかわりが深そうです。学長:ジェントルにはいろいろな意味があって、「人にやさしい」だけでなく、「社会にやさしい」「地域にやさしい」「環境にやさしい」など、多くの場でやさしさを発揮する学生になってほしいという願いを込めています。ポケモンGOは、これまで人が行かなかったところにまで人を引き寄せるようになったという意味で、地域への貢献度は大だったと感じています。野村:長年、多くの人を惹きつけてきたポケモンのコンテンツ力は、ものすごく大きいと思います。それとナイアンティックのビジョンがうまく掛け合わされた結果、地域貢献にも結びつきました。ナイアンティックにとって、ゲームは目的ではなく、手段のひとつなんです。人を外に連れ出すことによって、健康になったり、コミュニケーションが深まったりする。それが本来の目的なんです。藤島:学問を深めつつ、人や社会の課題・問題を自ら見つけて解決のための行動を起こすという姿勢は素晴らしいですね。学長:学問も受け身ではなく、これからは能動になっていかなくちゃいけない。最近、「アクティブ・ラーニング」とよく言いますが、これはべつに部屋の中で活発に議論することだけではありません。本来のアクティブ・ラーニングとは、自ら動いて学ぶことです。大学も本来のアクティブ・ラーニングをめざしていく必要があります。藤島:もし今18歳に戻れたとしたら、野村さんは何をされますか?野村:もっと机に向かって勉強します(笑)。大学の4年間は、本当にあっという間。時間が足りなかったと痛切に思います。社会に出ると、じっくりと腰を据えて勉強する時間は取れませんから、後輩の皆さんに声をかけるとすれば、「時間がある今のうちに、勉強しておくといいよ」と言いたいです。学長:若いときから時間の使い方を意識することは大事です。40年前にはなかったものが今あるように、40年後には今ないものがあふれているでしょう。そのとき自分たちは何ができるのか、40年後の世界を自分たちはどう作り上げるのか、自ら考える姿勢を持ってほしいと思います。外に出る意識が地域貢献につながる。時間は有限。自ら考える姿勢を。もし学生時代に戻ったら、もっとちゃんと勉強する。優等生みたいなことを言ってますが、社会に出てそう思いました(笑)。(野村)これからの学問は、受け身から能動へ。自らが動いて学びを深める、アクティブ・ラーニングが重要。(学長)【G3×L3】信州大学が大学運営の基本方針として掲げるキーワード。Gは「Green」「Global」「Gentle」、Lには「Local」「Literacy」「Linkage」の意味が込められている。【ナイアンティック】スマートフォンなどの機器を用いた位置情報アプリや、ゲーム開発を行う米国企業。2011年にGoogleの社内スタートアップとして設立され、2015年に独立。【ポケモンGO】ナイアンティックと株式会社ポケモンの協力により誕生したゲーム。位置情報と拡張現実(AR)を駆使し、ポケモンをつかまえたり、ジムでバトルをしたりする。06※1 日本経済新聞社・産業地域研究所「大学の地域貢献  度に関する全国調査」(2015)

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