信大NOW100号
13/20
Dentsu12イベント会場近くのオープンスペースでの取材風景。電通ビジネス・クリエーション・センター企画推進部の菊池哲哉部長(中央奥左)、信州大学外部広報アドバイザーの藤島淳さん(中央奥右)も駆けつけてくれました。こうしてリンゴの皮から生まれた製品、「果皮蜜(かひみつ)」を高付加価値製品と呼ぶ理由は、大きく分けると以下の4つの特徴から。まずリンゴの皮という未利用資源を活用したという点、そして「果皮蜜」100gあたりリンゴ5個分の豊富なポリフェノールを含むというその機能性、もちろん天然由来の甘み、さらに、何より、美しく鮮やかな赤い色です。高い含有率のポリフェノールは疲労回復やアンチエイジングへの効果も期待できそうですね。このなんとも優れものの「果皮蜜」を使った新しい商品開発とビジネスモデルを作るのが「果皮蜜プロジェクト」で、共同研究のパートナーが「電通」という点も相当ユニークです。プロジェクトのご担当、電通ビジネス・クリエーション・センター シニア・プランニング・ディレクター 金井 毅さんにお話を伺うと「大学との取り組みでここまで突っ込んだ企画は初めて。試験的ではあるが、すでに東京都内の飲食店でメニューコラボ企画を実施したり、大手食品卸売会社と組んでの新商品開発の検討を進めています」とのこと。現在、「果皮蜜」は信州大学が製法特許を出願中、電通が商標を取得。出会いから2年、見事なスピードで事業展開し、ビジネス化に向けて大きく動きはじめています。次は工学部ならでの加工技術について松澤特任教授に伺いました。研究に用いたのは「酵素処理技術」。「酵素」とは、物質の化学反応を促す触媒の働きをするタンパク質の一種で、生物の体内で作られており、食べたものを消化したり、筋肉を動かしたりと、人間の体が機能するのに必要不可欠な存在です。もともと、松澤特任教授が所属する研究室が長年扱ってきた研究材料でもあります。この酵素を食品などに添加し、酵素反応を利用することで、ポリフェノールなどの機能性の高い物質を効率的に抽出することができる、これが「酵素処理」といわれる技術です。この方法を用いて、リンゴの皮から有用な成分が抽出できれば、機能性を持ち合わせた「赤いりんごジャム」が完成します。松澤特任教授が研究を開始した2013年にはポリフェノールを豊富に含んだ鮮やかな赤色の糖蜜液(果皮蜜のこと)も完成、「まるごとりんごジャム」を商品化し、販売を開始するに至りました。できあがった糖蜜液(果皮蜜)の優れた特性から、それ自体に応用の可能性を感じていたという松澤特任教授。しかし、当初はジャムの開発をメインに据えていたため、具体的なプランがあった訳ではなかったようで、そんな折に知り合ったのが、電通ビジネス・クリエーション・センターの金井さんだったそうです。今まで廃棄されていただリンゴの皮(植物残渣)を有効活用する。環境に優しく、とってもエコな商品だ。リンゴすべてを使うことで生産農家の方々もとても喜んでいる。捨てられるリンゴの皮がこうして高付加価値製品に美しいリンゴの“赤”を酵素の力で引き出す工学の技術信州大学工学部松澤恒友特任教授(写真左)と電通ビジネス・クリエーション・センター、シニア・プランニング・ディレクターの金井毅さん(写真右)。「大学は美味しい!!」フェアの信州大学ブースで、出会いの発端となった「まるごとりんごジャム」を手に記念撮影。リンゴといえばやはり赤いイメージ。実は皮には100gあたり、リンゴ5個分のポリフェノールを含有。この無添加・無着色の天然フレーバーに着目 !
元のページ