環境報告書2016|信州大学
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修士論文修士論文修士論文理工学系研究科 化学・材料専攻 機能高分子学コース 谷口 裕則理工学系研究科機械・ロボット学専攻 南木 裕司 加水分解性Gemini型 界面活性剤を用いた 染料廃液処理法に関する研究 廃水処理は、エネルギー、凝集剤の添加剤などを大量に消費する環境負荷の大きな工程である。また、廃水に含まれる有用資源の回収も課題である。染料、重金属イオン、生理活性物質など水溶性有用・有害物質の分離回収法として高効率、低コスト、大規模化可能な溶媒抽出法が注目され、種々の抽出剤が開発されて来た。しかし、いずれの場合も抽出物の回収には溶媒の留去、多量の遊離剤(酸・アルカリ、アルコール等)の添加など環境負荷の大きな処理が必要である。我々は、温和な条件で加水分解可能な脂溶性抽出剤を用いたイオン性基質の回収分離システムの構築を目指している。 本研究では、容易にアルカリ加水分解可能で、2-ehtyl-1-hexanol(C2-6OH)成分を有するGemini型(2本鎖)カチオン界面活性剤を合成し、C2-6OHを有機溶媒に用いて種々のアニオン性染料の抽出、逆抽出を検討した(図1)。そして、2種類(アニオン-カチオン、アニオン-アニオン)の混合染料水溶液から、抽出過程あるいは弱アルカリ水溶液による逆抽出過程で片方の染料のみを選択的に回収分離できること、逆抽出後の有機溶媒を繰り返し使用できることを実証した。まだ、モデル実験の段階であり解決すべき課題も多いが、スケールアップ化、活性剤の改良も容易で、新規な水溶性有用・有害物質の分離回収法としての実用化が大いに期待できる。 セルロース樹脂を用いた 連続繊維グリーンコンポジットの創製 連続繊維強化複合材料(熱硬化性樹脂を使用: FRP、熱可塑性樹脂を使用: FRTP)は、高比強度・高比弾性率で、航空機、宇宙機器、運送機器など広い分野に応用されている。 一方、社会のシステムは、大量生産、大量消費、大量廃棄の時代から、資源循環型社会へと移り替ってきている。 今までのFRPとFRTPは使用しているマトリクス樹脂や強化繊維は、石油由来のものが多く、問題視されていて、植物由来の樹脂や繊維を使用したグリーンコンポジットが注目されてきた。 今まで、植物(大豆、トウモロコシ)由来であるポリ乳酸(PLA)が開発され、グリーンな樹脂として多く研究されている。 本研究では、環境に優しい高強度材料を目指して、木材パルプ由来の熱可塑性セルロース樹脂をマトリクスとして、連続繊維強化熱可塑性プラスチックを開発する。高力学特性を持つために、高繊維含有率ができる溶液プリプレグ成形法を利用して成形する。 試作したFRTPの力学特性評価を行い、提案したグリーンコンポジットの可能性を確認した。 繊維の表面処理方法や成形法や成形条件を検討し、提案した方法と成形条件で製作したセルロース樹脂を用いた連続繊維強化GFRTPは世界で初めてGFRPと近い力学特性を持ち、GFRPの代替が可能だと確認された。図1 イオン性染料の抽出・逆抽出過程Fig.10 Tensile strength and tensile modulus of GFRTP and GFRP010203040500100200300400500GFRTPGFRPVf=41.7Vf=60.8%Vf=39.1%Tensile modulus (GPa)Tensile strength (MPa)Convertedvalue環境への取り組み022-1 環境教育33

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