人文学部案内2017|信州大学
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12From Professorsたとえば「安心さがし行動」というのがあります。恋人や友人に「私のこと好き?」と訊くような行動のことです。そんなことを繰り返し相手から訊かれると, 最初はともかくだんだんイヤになるでしょ。そして拒絶してしまう。そうすると, 訊ねた本人はやっぱり私は嫌われていたんだと思う。要するにそもそもの疑念を現実化することになって, 結果, 自尊心が傷つけられちゃう。そして抑うつになっちゃう。自尊心がさがって抑うつになる, 下方螺旋というプロセスです。自分のとった方法によって逆に苦しめられてしまう。そう。安心をさがすと皮肉にもそれが見つからない。ところでね, 自尊心の高い人もおなじ「安心さがし行動」をやるんです。でも安心さがしのやり方が違うみたいなんだよね。なんというか, 自尊心の高い人はさわやかにさがせている…(笑)。わからないでもないです(笑)。この「さわやかに」をどう取り出して研究するかが難しいんですよ。そもそも自尊心の「高い・低い」はどうやって見分けるのですか。自尊心尺度というのがあって, その高い低いで決めます。でも項目によって揺れがあるんですよね。本当にそうなのかということは難しい。私もそう思います。いろいろなアンケートに答えていて, 自分のことを答えているのか, そうありたい自分を示しているのか, はっきりしないときがあります。絡み合うんですね。ひとつの実験や調査ではわからないんですよ。ひとつの切り口では一面しか見えない。いくつかの実験や調査を組み合わせることによってはじめて全体像が明らかになるということです。社会心理学で切れる面も限られていて, 芸術や文学を学ぶことによって明らかになる面もあるでしょう。それらが集まって, ひとつの現象を押さえることができる。そんなアプローチを全体としてやるのがこの人文学部という場所なんでしょうね。そこがこの学部の良さかな。長谷川̶長谷川̶長谷川̶長谷川̶長谷川
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