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信大キャンパスの樹上田キャンパスアカガシ文・写真/荒瀬 輝夫No.10飾らないアカガシ、立ち姿は古武士の風。アカガシは、樹高20m以上になる常緑広葉樹。葉が大きいことからオオガシやハビロガシなどの異名をもつ。宮城・新潟以南に自生し、暖帯林を代表する樹種である。特に九州の山地帯上部に多く、温帯のブナ林と境界を接するように分布する。黒っぽいゴツゴツした樹皮をまとう地味な樹木だ。上田キャンパスの応用化学・材料化学工学棟の一角に1本だけひっそりと立つ。明らかに栽植であり、先達の研究者が、精力的に全国から様々な資源植物を導入した名残であろう。樹下を探すと、ドングリが散らばる中に小さい苗もあり、当地でしっかり子孫を残している。県内でアカガシが自然分布しているのは温暖な最南部のみで、県東北部で根付いているのは不思議でアカガシの樹下で成長を始めた稚苗。この春に芽生えたばかり。ドングリに蓄えられた養分を使い、1年目は10cm近くにまで伸びる。アカガシ(Quercus acuta Thunb.)樹高12m、幹の胸高周囲121cm。17上田キャンパス信大NOW No.79 2013.1.31 掲載ある。実は上田地域には、暖帯の植物が飛地的に自生することが知られている。夏冬の寒暖差の大きい内陸性気候であるが、小雨(年降水量900mm程度)で冬の晴天が多いという局所気候によるものか。名前の由来について、アカは赤味の強い材色、カシはコナラ属の常緑樹グループ(アカガシ亜属)をさす。樫という漢字が示す通り堅い木で、アカガシの木刀は有名だ。他に器具材、かんな台など強度を求める部材に用いられる。まっすぐ伸びた苗を庭の周りに生垣として植える「棒ガシ」という利用法もある。四季を通じて緑を湛えるアカガシ。静かに雄弁に、先人の熱意と上田地域の気候の特異さを物語ってくれている。事務棟講堂図書館正 門

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