環境報告書2015|信州大学
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環境マインドをもったグローバル人材育成のためのドイツ視察研修環境教育海外研修:ドイツ 担当教員:学術研究院(総合人間科学系)准教授松岡 幸司[全学教育機構 環境文学、外国語教育、ドイツ文学]日 程:平成27年2月14日〜3月9日研修地:ドイツ ミュンヘン/レーゲンスブルク/    ハノーファー/個人視察はドイツ各地参加者:学部生8名、引率教員1名■3か月半の奮闘を経て、いざ ドイツ語の運用能力向上と環境マインドの育成を目的とした「ドイツ環境ゼミ」は、ドイツ語を履修する1年生を対象としており、その中心となる「ドイツ視察研修」は2007年度から続くドイツ研修旅行がベースとなっている。研修期間は3週間。2週間はレーゲンスブルクの語学学校に通い、残りの1週間は環境をテーマにドイツ各地で個人視察と団体視察を実施した(開講期間は2014年度後期~2015年度前期)。 個人のテーマをもとに選考が行なわれ、8名の参加が決定したのは2014年11月。農学、人文、理学、工学と学部はさまざまで、昨年は医学、教育、経済の学生もいた。視察のテーマは「身近なところから育まれるドイツの環境意識」「Bio製品に対する人々の意識と環境教育」「ドイツのクリーンエネルギーを支えるモノ」など多彩だ。 参加決定から出発までの3か月半は、ドイツ語のレベルアップのための不定期授業や視察の準備に追われた。自身のテーマが学べる視察先を探し出すのは容易ではなく、学生たちは四苦八苦しながらドイツ語の辞書を引いてインターネットで検索し、懸命に資料を読み込んだ。■「なぜ?」を繰り返して本質に迫る ドイツ=環境先進国というイメージはあっても、その実態を知る機会はほとんどない。ドイツ到着後、ミュンヘン中央駅前がゴミだらけなのを見て学生たちはショックを受けた。「環境国のドイツがなぜ?」と。日本の街にはゴミがないのに環境先進国と言われないのはなぜか? そもそも環境を大切にするとはどういうことか? 不慣れなドイツ語を自分なりに駆使しながら、既に得ていた知識と、ドイツという「現地」で体験したことの違いを確認し、「なぜ?」を繰り返した学生たち。 「環境はそこに暮らす人の周りにあるもので、論文やインターネットの中にはない。その場所に足を運び、歴史や生活習慣や人々の意識を知ったうえで、“では、どうする?”を考えることが重要」と松岡准教授。ドイツの事例をむやみに日本に持ち込んだところで環境問題は解決しないことを学生たちも感じたようだ。 ちなみに、ミュンヘン中央駅前のゴミ問題は、「駅前のゴミはゴミ収集車がきれいにすればいいが処理できないゴミはダメ、だから核はダメ、原発はNO、というのがドイツ人の発想ではないか」というのが松岡准教授の見解。■“現地”での体験で変わること ハノーファーでは、ジャーナリストの田口理穂さんが団体視察の企画兼通訳として尽力した(実は信州大学卒業生で、松岡准教授とは人文学部の同期)。現地在住で環境問題に通じる彼女がいたからこそ、気候保護局、ライプニッツハノーファー大学、学校生物センター、エネルギー歴史博物館など訪問先は充実した。田口さんのみならず、松岡准教授の知人たち(通訳、オーケストラ団員、日本語教師ら)と会食の機会を得て、ドイツに暮らす日本人の、ドイツ人とは異なる視点から環境や暮らしについて聞くことができたことも学生たちの刺激になった。 報告会は7月4日に開催された。「ドイツに渡ってから視点がどんどん鋭くなった学生がいる。帰国してから一本筋が通った顔つきに変わった学生もいる。日本にはまだ浸透していない“環境問題とは自分を取り囲む問題のこと”という捉え方を育てるのが環境マインドであり、そのきっかけになる3週間だった」と松岡准教授。 「環境ってなに?」という問いが自身の中でどう醸成され、どんな結論が導き出されるのか。学生たちの今後の変化に期待したい。ドイツで最も充実した環境教育施設というハノーファー市営の学校生物センター。理科の先生のサポートも行っているハノーファー市で2番目に歴史あるオーガニック専門スーパーのスタッフにオーガニック製品(BIO:ビオ)について質問ハノーファー清掃公社では、ごみ処理や埋立地のこと、リサイクルをしない理由などをヒアリングした平成26年度グローバル人材育成事業37

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