環境報告書2015|信州大学
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「カーボンファイバーに続く次なる炭素イノベーション目指す」研究リーダー(RL) 遠藤守信・信州大学特別特任教授■逆浸透(RO)膜の世界に ナノカーボンで挑戦する RO膜の技術は1970年代に生まれ、すでに50年も経っている。技術的には征服しつくされ、枯れた分野だ。我々はあえてその分野に、ナノカーボンで挑戦する。 具体的には、高分子が中心の現状エレメントをナノカーボン材料に置き換える。さらに、膜の寿命を従来の7年ほどから、10、15年に伸ばしたい。すでにあるカーボンナノチューブ、グラフェンといったナノカーボンを脱塩、造水の観点からとらえ直す。ナノカーボンはロバスト性、効率という意味で期待できる材料だ。■研究の現状について 2014年10月から研究をスタートさせ、ようやく論文誌に出稿し、特許を出せるところまできた。 ナノカーボンは革新的な機能をもっている。脱塩や造水の分野で、その革新性をさらに高め、RO膜に挑む。ナノカーボンを使ってナノテク、炭素化などさまざまな方法でRO膜を創り、技術的に高い峰のRO膜に向けてチャレンジしているところだ。 産学連携で大勢の皆様が集まり、協力するだけではなく、適度な競争のコンセプトが入っている。まさに“共創”だ。DLC膜で先行する物質・材料研究機構だけでなく、同じ信大のチーム内でも競争しつつ、一方で協力しながらやっている。カーボンにはいろいろな機能があり、結果的に塩素に強く、ファウリング(目詰まり)しにくいものが出来ている。■地方大で初のスーパーコンピュータ 地方大学では初めて信大にスーパーコンピュータが導入された。富士通製で、すでに大きな実績をあげてきた海洋研究開発センターの地球シミュレーターは600億円だが、その4分の1くらいの能力を、コンピュータ技術の進歩のお陰で効果的に入手できたことは喜ばしいこと。早速、スパコン担当のRISTの研究チームと組んで、カーボン膜の材料開発に使わせてもらっている。シミュレーションとものづくりの現実が異なることは承知しているが、ナノカーボンの膜にできたナノ細孔を、塩素イオン、ナトリウムイオンは通さず、水の分子だけが通り抜けるのが、シミュレーションで分析できている。◇専門:炭素材料工学、新炭素体の基礎科学と応用◇略歴:信州大学大学院工学研究科修士課程修了、    工学博士(名古屋大学)、仏オルレアン大学博士1972年1977年1978年1990年1993年~1995年2004年~2010年2005年~2012年2012年◇受賞歴(代表的なもの)2004年7月2007年4月2008年5月2012年9月信州大学助手(日立製作所勤務を経て)信州大学工学部講師信州大学工学部准教授信州大学工学部教授信州大学地域共同研究センター長(併任)炭素材料学会会長カーボン科学研究所所長(併任)この間、フランスCNRS客員研究員、MIT招聘研究員など歴任信州大学特別特任教授、カーボン科学研究所名誉教授Medal of Achievement in Carbon Science and Technology(American Carbon Society)科学技術分野の文部科学大臣表彰・科学技術賞(研究部門)、触媒気相成長法によるカーボンナノチューブの研究紫綬褒章NANOSMAT Prize 2012プロジェクトのキーテクノロジーの研究開発を担うのが、研究リーダーの遠藤特別特任教授の研究チームです。そこで第2回シンポジウムから、遠藤教授の講演部分をクローズアップしました。アクア・イノベーション拠点 研究リーダー(RL)遠藤守信(信州大学特別特任教授)遠藤守信(えんどう・もりのぶ) 信州大学特別特任教授のプロフィール9

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