2014環境報告書|信州大学
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 また、水力発電では、ゴミつまりの解決が共通の課題です。ゴミが水車部分に詰まると、発電が不安定になります。技術改善によって、除塵のシステムを向上させることは可能です。しかし、完全にメンテナンスフリーというのは現状ではあり得ません。そのため、地域の人と協働して水力のメンテナンスを行なっていくことも必要です。■新技術導入と地域の連携について 日本には、開発可能な水力資源(理論包蔵水力)が多く存在します。日本の技術で開発可能な水力資源のうち未利用の部分は約50%にも上ります。この50%を活用することが出来れば、約2億世帯分の電力が賄えると言われています。長野県は、北海道、岐阜県に続き3番目の未開発包蔵水力を持っており、460万人分ものポテンシャルになるという調査結果が出ています。 しかし、技術水準がクリアしていても、導入し活用されなければ机上の空論です。 栄村での取組みは、水車や発電したエネルギーを理解してもらい、水車と地域がともに歩み、技術が地域の中に普及するような、一歩踏み込んだ形のモデルケースにしていきたいと思います。 将来的には地域の人たちに「これは自分たちの水車だから大事に使っていこう」と感じてもらい、管理から電気の使用までを一貫して地域で行なってもらえるのが理想です。 現在、プロジェクトでは、住民との意識の共有を目指して、発電した電気を地域としてどのように活用していくことが有効か、というヒアリングを行なっています。 本プロジェクトを通して、小水力の普及に繋げ、電力の地産地消を推進し、栄村の小赤沢地区を日本に誇る小水力モデルにしていきたい。水の都安曇野から水資源利活用のルール作りを探る安曇野の取組み地下水を含む水資源が非常に豊富な安曇野市をフィールドに市民の地下水に対する意識調査やルール作りへ向けた調査を進めています。社会科学グループの岡本卓也学術研究院准教授(人文科学系)に安曇野市民の地下水への意識調査から見えてきた地下水の保全と涵養についてお聞きしました。■安曇野を対象に進む地下水の意識調査について 松本盆地には推定約100億㎥もの地下水があると言われており、非常に水資源が豊かな地域です。しかし、この水資源も使い続けていれば、いずれは枯渇してしまいます。実際に安曇野市では1年間に地下水が600万㎥減っていると言われています。ここ20年で1.25億㎥減少している計算になります。減少の理由は、過剰な取水だけではなく、水源涵養機能を持つ、森林の整備遅れや田んぼの減少等があげられます。 持続的に地下水を活用していくためには、保全・涵養といった側からのアプローチも当然必要になるでしょう。 現行法では、地下水利権は土地所有者のものと定められています。2014年3月に成立した水循環基本法においても土地所有者に対する規制は十分ではありません。 そのため、地下水の保全や信州大学が研究している地下8

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