2014環境報告書|信州大学
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特 集信州型水マネジメントモデルを探るRISTEX研究プロジェクト信州大学RISTEXプロジェクトレポート地球温暖化や異常気象、地下水の過剰使用、急激な人口増加などによって地球規模での水不足が進んでおり、近年「水」への注目が社会的に高まっています。水資源が豊富と言われている日本においても海外資本の水源地の乱開発などが進んでおり、水の保全や利活用、それに対応するルール作りが急務になっています。こうした状況の中、信州大学では「水資源の保全とエネルギー源としての利活用、さらに水利マネジメントや新しい制度化などの社会システムの形成」を目的に2012年10月に「信州大学RISTEX研究プロジェクト」が立ち上がりました。同プロジェクトは、栄村と安曇野市をフィールドにして、地表水と地下水の保全・利活用について、社会科学と自然科学の多角的な視点からアプローチを進めている特色ある取組みです。国や地域に向けて「信州型の水マネジメントモデル」の提言を目指しています。プロジェクトリーダーである天野良彦学術研究院教授(工学系)にプロジェクトを通して見えてきた水利用の問題点と展望をお聞きしました。※ 同プロジェクトは、平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構社会技術研究開発センター (JST-RISTEX)の進める「科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム」に採択されています。プロジェクトの期間は2012年10月1日~2015年9月30日。■RISTEX研究プロジェクトの概要について 水資源が豊富な長野県の環境を生かして、信州大学ではこれまで、工学部を中心にナノ水力発電システムの開発や地下水を利用した次世代地下水空調システムの開発などを行なってきました。 しかし、これらの技術を広く社会に導入するためには、いくつかの問題があります。河川等の地表水に関しては、河川法に基づく水利権という壁があり、河川の新規利用が難しい状況です。 地下水においてはそもそも明確なルール自体が存在しておらず、導入のための基準づくりや制度の整備が不可欠です。現行制度では、土地の所有者が地下水を汲み上げる事に対して、制限がありません。外国による日本の水源地開発も進んでいます。 こうした問題を解決していくためにも、本プロジェクトでは、水を利活用する地域の人々の意識作りやルール作り、更には総合的かつ包括的な法律(水法)の整備や社会的合意形成を目指しています。 以上のことを踏まえて、同プロジェクトでは水を重要な「公共財」と考え、次の3項目の研究を進めています。1  水の循環についての自然科学的知見を基盤にして、水の保全と高度利用を進めるための政策および制度形成を検討する。2  水利用技術を導入・実装する際の社会的手続きと導入手法を事例に則して検討し、その手法に沿って実装を進める。3  実際の導入を進める中で、自治体や地域社会との対話や利害調整と合意形成を進め、その過程で得られた知識等を社会技術として体系化する。  具体的には、地表水と地下水に関して、2つの地域をフィールドにしながら、水利用について考察していきます。地表水は、栄村への小水力発電の実装実験を行なっており、小水力発電の計画から設置、活用の段階で出てくる問題点や課題を克服しながら、地表水利活用のモデルケース作りを目指しています。学術研究院教授(工学系)[工学部物質工学科教授]天野 良彦工学部物質工学科分子創成化学分野研究領域 生物化学・微生物の生産する酵素1995年信大工学部助手、助教授などを経て2005年より教授。2010年~2014年7月まで地域共同研究センター長。5

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