2014環境報告書|信州大学
34/56

卒業論文専門演習論文農学部 応用生命科学科 関根 翠経済学部経済学科 黒坂 麻裕Anabaena sp. PCC7120におけるセルロース生産能の改善 現代社会の問題として、化石燃料の大量消費による温室効果ガスの濃度上昇や化石燃料資源の枯渇問題が挙げられる。この対策の一つとして、バイオエタノール生産が行われている。しかし、現在のバイオエタノール生産はトウモロコシやサトウキビを主原料としているため、食料生産との競合が問題視されている。そこで、食料生産と競合しない光合成微生物由来のバイオエタノール生産が望まれている。 本研究では、藍藻(Cyanobacteria)の一種であるAnabaena sp. PCC7120を用いて、バイオエタノール生産用セルロースの生産を目指している。Cyanobacteria由来のセルロースは細胞外に分泌され、さらに微結晶性で分解が容易であるなどいくつかの利点がある。そこで、セルロースの前駆体であるUDP-グルコースを合成する酵素(GalU)をAnabaena sp. PCC 7120内で過剰発現することによって、セルロース生産能の改善を試みた。 結果、セルロース量の増加は見られなかったが、セルロース生産と競合すると考えられるスクロース量、グリコーゲン量の著しい増加が見られた。このことから、本研究で作出した変異株の炭素固定能上昇が示唆された。今後、競合経路のノックダウンなど代謝経路を最適化することで、セルロース生産能の向上を行っていく予定である。放置自転車削減による外部不経済の解消 放置自転車は、 通行の妨げや事故の危険性増加、 盗難による治安悪化、 街の景観悪化などの諸問題を引き起こし、 放置自転車撤去コストを含めたこれら外部不経済に伴う社会的な損失は小さくない。 自転車通学者が大半を占める信州大学でも、 毎年200台以上の自転車がキャンパス内に不法投棄されており、 これらの自転車は最終的にすべて廃棄物として処理されている。  本研究では、 信州大学における自転車の放置インセンティブを見極め、 上記のような外部不経済解消に向けた自転車リサイクルシステムを提案する。 まず、 独自のアンケート調査により、 2年次進級に伴う松本キャンパスからの離散(離松)や卒業時に生じる信州大学特有の放置需要の存在が示唆された(図1)。 その結果、 信州大学、 特に離松に伴う放置需要が大きい1年生寮における循環型自転車利用システム:「離松に伴う不要自転車の事前引取 → 新入寮生への通年レンタサイクル → レンタル後にかかる修理・整備代金の実費請求 → 翌年度寮生への通年レンタル」の構築が効果的であると考えた。 これにより、 以下の4つの効果が期待できる。 ①  事前引取を促進することで、 潜在的な放置需要を阻止するだけでなく、 長期放置による自転車の劣化を防ぐ(事実、 図2より不要自転車を譲渡したいと考える学生は多い)。②  レンタサイクルの導入により、 安価(≒低質)な自転車の新規購入が抑制されることで、 放置需要の削減につながる。③  所有権と修理費用の所在を明確にすることで、 レンタル自転車の利用意識の向上を促し、 劣化を抑制する。④  修理・整備の外部委託により、 整備不良による過失などの法的リスクを解消できる。 このようなシステムを導入するために、 実験的プログラムを施行し、 システムの持続可能性と実現妥当性について今後検討する必要がある。卒業論文・専門演習論文2環境への取組み2-1 環境教育2-1 環境教育図1 レンタル自転車利用希望者割合 図2 不要自転車の譲渡希望者割合全体サンプル数567人(うち現在の自転車所有者は485人。左記5グループのサンプル数シェアは、左から18%, 31%, 24%, 22%, 4%)35%30%25%20%15%離松1年生在松1年生在松2年生在松3年生在松4年生全体現在の自転車所有者のみはい75%いいえ13%無回答12%図2 セルロース定量結果図3 スクロース・グリコーゲン定量10009008007006005004003002001000WTGalU oxWTGalU oxcellulose [㎍/g (dry cell weight)]4035302520151050スクロースグリコーゲンSucrose [㎎/dry cell weight]図1 Anabaena sp. PCC712033

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です