2014環境報告書|信州大学
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博士論文修士論文医学系研究科 医学系専攻(博士課程) 小林 信光理工学系研究科 応用生物科学専攻 中川 貴裕2環境への取組み2-1 環境教育2-1 環境教育Polymorphisms of the Tissue Inhibitor of Metalloproteinase 3 Gene Are Associated with Resistance to High-Altitude Pulmonary Edema (HAPE) in a Japanese Population: A Case Control Study Using Polymorphic Microsatellite Markers 高地肺水腫(HAPE)は低酸素環境下で発症する非心原性の肺水腫である。その原因の1つとして、低酸素環境に対する反応の個体差が考えられている。本研究では全ゲノムに存在する400種類のマイクロサテライト(MS)マーカーを用いて相関解析を行い、日本人のHAPE発症に関与する可能性のある候補遺伝子を同定した。さらに候補遺伝子内に設けた単塩基多型(SNPs)を用いて詳細マッピングを行い、HAPEとの関連につき検討した。 研究対象はHAPE発症者群53例(HAPE-s)と、HAPE非発症者群67例(HAPE-r)である。HAPE-sは登山中に2500m以上でHAPEを発症し、信州大学医学部附属病院あるいはその関連施設で治療を受けた患者である。HAPE-rは長野県登山協会および信州大学山岳部に所属し、頻回に3000m以上の登山を行い、これまで高山病や心肺疾患の既往のない者である。それぞれの遺伝子につき400個のMSマーカーを用いた相関解析を行った。その結果9個のマーカーで両群間に有意差を認め、5個のマーカーで有意に疾患感受性を、4個のマーカーで有意に疾患抵抗性を認めた。そのうちD22S280は強い関連を示し(オッズ比 0.30、Pc = 0.020)、tissue inhibitor of metalloproteinase 3(TIMP3)の遺伝子内に局在していた。そこで、TIMP3遺伝子がHAPE発症に関連する可能性があると考え、Taqman AssayによるSNPs解析を行った。その結果rs130293のアリルCが有意差をもって疾患抵抗性を示し(P = 0.00049、OR = 0.22, 95%CI 0.09-0.55)、HAPEの発症と関連を認めた。 TIMP3はいくつかあるTIMPsのうち唯一細胞外質(ECM)に強く結合し、matrix metalloproteinase(MMP)の活性を制御することにより健常な組織を維持する。TIMP/MMPシステムの障害は、肺においては炎症や浮腫、気腫、線維化など様々な病態を引き起こすと考えられている。HAPEでは肺血管の透過性が亢進し、肺水腫を起こすとされる。肺血管は一層の内皮細胞から構成されており、肺のECMに支持されている為、TIMP3の遺伝子多型からTIMP/MMPシステムの不均衡が生じ、結果として肺血管の透過性が変化しHAPEの発症に関与すると考えられた。 本研究から、TIMP3遺伝子のSNPであるrs130293のアリルCが、日本人におけるHAPEの発症に関して、疾患抵抗性に関与する可能性が示唆された。アミノ化フラーレンスートを用いた水中の環境汚染物質の除去 サッカーボール様の構造をした炭素化合物として知られているC60フラーレンは材料として様々な用途に使用されている。このC60フラーレンを作成する際に生じるフラーレンの副生物である“すす”(フラーレンスート)をアミノ化したアミノ化フラーレンスートを水浄化用の吸着剤として用いることができないか検討を行った。 毒性を有することが知られている六価クロムおよびメチルオレンジを対象物質として、アミノ化フラーレンスートを吸着剤として作用させたところ、アミノ化フラーレンスートがいずれの物質についても高い吸着性能を示すことが分かった。また、適当な溶媒を用いることにより、一度、アミノ化フラーレンスートに吸着したこれら物質を脱着することも可能であることを明らかにした。脱着を行った後、再度、吸着実験を行っても吸着能の減少はほとんど見られなかった。このことは、アミノ化フラーレンスートを吸着剤として繰り返し使用することが可能であることを示している。 このようにアミノ化フラーレンスートは六価クロム、メチルオレンジに対する有効な吸着剤であることが分かった。Ref. Takahiro Nakagawa, Ken Kokubo, Hiroshi Moriwaki; Application of fullerenes-extracted soot modified with ethylenediamine as a novel adsorbent of hexavalent chromium in water, Journal of Environmental Chemical Engineering, 2014, 2, 1191-1198.博士論文・修士論文アミノ化フラーレンスートの走査型電子顕微鏡写真アミノ化フラーレンスートによる六価クロムの除去六価クロム溶液六価クロム溶液アミノ化フラーレンスートにアミノ化フラーレンスートにより六価クロム除去後の溶液より六価クロム除去後の溶液表 rs130293の解析結果                     *オッズ比 = 0.21, 95% 信頼区間= 0.08-0.57SNPアリルアリル1オッズ比P遺伝型の分布PP頻度(95%信頼区間)11122211/11+12/(1/2)HAPE-s HAPE-rHAPE-s HAPE-rHAPE-s HAPE-rHAPE-s HAPE-r12+2222rs130293C/T0.057 0.2160.220.000490 0.060.113 0.3130.887 0.6270.07040.0012*(0.09-0.55)29

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