2014環境報告書|信州大学
16/56

 私は、大学を卒業後、根羽村という人口1,000人ほどの小さな村で役場職員として社会人生活をスタートさせました。林務係として勤務してきた経験から、ここでは、山や林業に関わる環境についての根羽村の取り組みを紹介させていただきます。 環境と一言でいっても、色々ありますが、根羽村では環境教育の場を提供しています。根羽村が愛知県へ流れる矢作川の上流にあることから、下流域である愛知県の都市部との交流があります。上流にあたる根羽村の川の水が下流の人々にとって生活に欠かせないものとなります。これまで多くの人々が根羽村に来て、生態や透明度、水質について学習し、また、間伐材を薪にし、川の水を使っての薪風呂体験や、素手での川魚のつかみ取り体験、つかみ取りした川魚を炭で焼く食体験などをしました。交流の中で、手のこぎりを使い、木を切るという間伐の体験学習をすることがあります。特に、1年に1回、間伐体験の前に小学生に対して、森林の役割、間伐の必要性、林業という仕事についての授業を行っています。間伐が自然破壊だと捉えている生徒は少なくありませんので誤解を解くことも大事で、教壇に立ったことのない職員がこの特別授業の中では先生になります。生徒たちは体験したことのない未知の世界を思い描き、多くの疑問を投げかけてきます。そして、いざ 私は、日本小水力発電株式会社という、小水力発電のシステムを設計・施工・販売する会社で営業と広報を担当しています。元々山形大学で法律を学んでいた私が、建設分野の仕事についたのは、学生時代に地域づくり活動に参加していたことがきっかけでした。 山形大学の先生が関わっていたNPOに参加し、地域の方々や他の学生たちと一緒に、山形県新庄市の小水力発電の実験システムを立ち上げる活動を体験しました。人口流出が進み、コミュニティの維持が難しくなってきた地域でしたが、豪雪地帯で水資源が豊富にあり、それを利用して発電し、冬期間に野菜の栽培を行うというものでした。システムを作る過程で、地域の方々は「初めてみんなで力を合わせてやった」と喜び、集落にある「水」という“宝”を知り、集落を復活させたいという話をするようになりました。私自身は、さらに地域づくりについて学びたいと信州大学大学院経済・社会政策科学研究科に入学することになったのですが、その3月に東日本大震災が発生し、あらためて環境・エネルギー問題を見つめさせられ、小水力発電に取り組んでいる意義を深く感じることになりました。大学院では、小水力発電の地域的な諸課題をテーマにした論文に取り組みました。 現在、自然エネルギーの中で太陽光発電の開発が進んでいますが、太陽光は利用しやすい反面、乱開発などの問題も出ています。一方、小水力発電の場合、水は地域の資源であり、勝手に使うことはできません。自然と共生し、地域の合意を得て、調和しながら、運用されています。山梨県都留市のケースは、川に設置された水車に当初ごみがたくさん流れ着きましたが、それを見た住民の意識が高まり、川がきれいになっていきました。 小水力発電は、現地調査や水利権取得など発電システムの着工までに2~3年ほどかかるため、時間と投資が必要になります。また、河川法などの法規制や、経験のある技術者が少ないなど、普及するには多くの課題があります。しかし、水は、昼夜もなく常に流れ続けているために、原発に代わる安定した供給が可能です。流れる水がある限り、地域に持続可能なエネルギーが生まれるのです。 小水力発電は、地域と関わり、そこにある水資源を大切に活かしていきます。それが地域の経済や文化を発展させ、地域を潤し、未来の生活を支えていくことになると、私は信じています。特 集特 集小水力発電に取り組む木育の取り組み環境と生きる人づくり環境と生きる人づくり日本小水力発電株式会社 髙野侑実さん根羽村役場 振興課 浅井沙希子さん髙野侑実・たかのゆみ1988年 長野県長野市生まれ2011年  山形大学人文学部法経政策学科卒業2013年  信州大学大学院経済・社会政策科学研究科卒業2013年 日本小水力発電株式会社入社浅井沙希子・あさいさきこ1986年 富山県生まれ2009年 信州大学農学部卒業2009年 根羽村役場就職15

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です