2014環境報告書|信州大学
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ネパールでは、森林伐採による土壌浸食や都市部における水質・大気汚染といった様々な環境問題に直面しています。こうした問題を解決していくためには、世界各国が協力し合い、物資や技術の支援をしていくことが必要不可欠です。しかし、援助の種類や方法を考えていかなくてはなりません。ネパールにも様々な支援がされていますが、問題が生じています。実際、「援助金の一部がネパール政府によって着服されているのではないか」との懸念の声もカトマンズの若者から聞こえてきました。現物支援でも、物資と地域のニーズがマッチしないという現象が起きています。例えば、視察に訪れたマルファ村では次のような事例が紹介されていました。山間部にある同村に某国から大型の中古農業機械が贈られました。しかし、マルファ村の農地は一つ一つが小さく、段々畑になっています。そのため、大型の農業機械は使えませんでした。結局今でも、倉庫に眠っている状況とのことでした。国際協力を行なうには、被支援国がどのような問題を抱えているかを正確に読み解く必要があります。ないものではなく、あるものを見直し、それを後押しする支援が必要なのではないでしょうか。マルファ村には、広い農地はありません。しかし、豊富な水資源や強い太陽放射があります。この特徴を生かして、ミネラルウォーターの製造技術や太陽光を活用したソーラーパネルの設置といった支援であれば、有効に使ってもらえると感じました。国という大きな単位で考えるよりも、より小さな共同体に対しての支援というのも考えていくことが重要です。また、実際にネパールを訪れて、途上国では、環境問題に配慮した暮らしを送るというのは、次のステップなのではないかと感じました。それぞれの国が抱えている環境問題を解決していくためには、経済発展と教育制度の整備を進めていくという方向からも強く支援をしていかなければならないと思いました。牧内 和隆さん (理学部物質循環学科3年)04REPORT環境問題解決に向けた国際協力を考えるネパールは水資源が乏しい訳ではありません。電力発電の90%以上は、ヒマラヤ山脈から流れる豊富な水資源と標高差を活用した水力発電です。発電に使える程の豊富な水資源があるにも関わらず、飲み水や調理、栽培に使える水が不足しているという矛盾が生じています。また、水力発電が利用されているといっても、慢性的な電力不足であり、長い日は1日の半分以上が停電ということも珍しくありません。下水の処理施設なども、電力がなければ稼働できないという悪循環に陥っています。水質汚染の改善という問題ひとつをとってみても浄水技術の導入だけでなく、安定した電力供給などのインフラ整備を進めていかなくてはいけません。また、ゴミの投棄に関する制度作りや教育も同時に進めていかなくては、水質汚染を根本から解決することは難しいと感じました。水問題は、人間の命に直結することです。汚染するのは容易ですが、それを改善していくのは、非常に困難です。世界の水問題について、これからも考えていきたいと思います。平成25年度 環境教育海外研修包括的な環境整備が水問題解決への道ないものではなく、あるものを生かす支援信大NOW88号より(発行:2014年7月31日) バイオメディカル研究所「信大改革と学術研究院」学長インタビュー信大改革特集 第2章開発途上国が抱える環境問題 ―ネパールを訪ねて―…他最先端の生命科学研究を世界に発信し異分野融合研究で境界領域の新知見発掘に挑戦するシリーズ:先鋭領域融合研究群を追う Vol.2平成25年度 環境教育海外研修報告つながる・しんだい信州大学 広報誌 2014年7月31日発行(隔月発行)第88号8888888888888888888888信大NOW88号より(発行:2014年7月31日) 14

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