2015工学部研究紹介|信州大学
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環境機能⼯学科研究から広がる未来卒業後の未来像環境機能⼯学科研究から広がる未来卒業後の未来像浅速流で発電する下掛けタイプの衝動水車。水車は橋からぶらさげた2本の支柱で支えている。得られた電気は水路脇の民家で利用湧水で発電する滝水車(左)と、温泉水によるジェット水流で発電するジェット水車(右)。それぞれ電気柵と衛星電話の電源に利用飯尾研究室純国産最大の再生可能エネルギーである『水力』。水力発電と言えば山奥にダムを建設する大規模発電所の印象がありますが、これからの水力発電は小規模分散型。それを実現するのが、飯尾研究室で行っている自然環境にやさしい『Eco(エコ)水車』です。身近な水路の『流れに置くだけ』で発電し、水力の地産地消が可能です。総延長40万kmにもなる日本の農業用水路を流れる水力エネルギーの活用を目指しています。全発電方式の中でライフサイクルCO2排出量が最も少ない小規模水力発電は、地球温暖化防止の観点からも注目を集めています。Eco水車開発では、室内基礎実験から実際の水路でのフィールドテスト、実用化まで広範囲に実施しています。水路の形態によって異なる水流状況にあわせて数種類の水車を開発しています。高性能かつ低コストの水車発電機の実現を目指し、人工河川での性能評価実験やコンピュータシミュレーションによる水車形状の最適化などを行っています。学生たちにとって、自ら手掛けた水車が実用化される喜びは大きいようです。これまでの卒業生は、水力発電機器、自動車、プラント、ポンプ、空気圧機器、空調設備、工作機械等の機械関連業界に就職し、設計や商品企画、研究開発などの『ものづくり』担当のエンジニアとして国内外で幅広く活躍しています。飯尾昭一郎准教授宮崎大学博士後期課程修了後、信州大学工学部助手、同助教を経て、2011年より現職。主な研究分野として、流体力学を基礎とした環境にやさしい小型水力発電、流れの省エネルギー制御・可視化に取り組んでいる。『Eco⽔⾞』〜流れに置くだけの⽔⼒発電キャビティを過ぎる流れの振動コントール。左はコントロールしない流れ。右はコントロールして振動が低減した流れスリットから流体が吹出す二次元乱流噴流の渦度(流体の回転角速度)の等値面。この流れの中で物質がどう拡散するかも調べている吉⽥研究室吉田研究室は、流体の流れと物質やエネルギーの移動現象についてスーパーコンピューター(スパコン)を用いて数値シミュレーションする研究を行っています。身の回りにある空気(気体)や水(液体)など流動する物質を流体といいます。流体の流れは身近な工業製品から地球環境まで広く関係しています。流体の運動や流れによって拡散する物質やエネルギーをコンピューターで計算することで、複雑な現象を解明し、さらに流れや拡散をコントロールすることを目指しています。例えば、キャビティを過ぎる流れの振動をコントロールする新しい方法を開発しています。流体の運動は運動方程式を解けば分かります。しかしその運動方程式は非線形であるため、解析的に解くことはできません。そこで1秒間に10兆回以上の膨大な計算が高速でできるスパコンで数値的に解く数値シミュレーションが有効なのです。スパコンがより速く進化することによって、目に見えない空気や水のより複雑な流れを解明することができるようになります。数値シミュレーションの技術は、様々な工業製品の開発に広がっています。卒業生は機械メーカーエンジニア、プラントエンジニア、ソフトウェアエンジニア、システムエンジニアなど様々な分野で活躍しています。吉田尚史准教授名古屋大学工学部助手、信州大学工学部助手、講師を経て2003年より現職。研究分野は流体工学。特に、数値シミュレーションによって流体を研究する数値流体力学を専門とする。スーパーコンピューターで計算する流れのメカニズムとコントロール63

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