2015工学部研究紹介|信州大学
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昭和14年に日本陸軍の依頼により分離された木材腐朽菌、地球上の木質系の有機物分解に必須の地球の掃除屋さん日本に一台しかない高温高圧の連続式水熱反応装置。水だけで有機物の分解を行い、その後の酵素反応を手助けする物質⼯学科天野研究室研究から広がる未来卒業後の未来像発光する透明な雲母セラミック透明な雲母セラミックの電子顕微鏡写真(ガラス中に雲母が析出)ナノサイズの雲母結晶(雲母の層状構造が確認できます。)紫外線の照射により発光可視光下5mm物質⼯学科樽⽥研究室研究から広がる未来卒業後の未来像天野研究室では、生物化学を基礎として、生物が持つ機能を活かしたものつくりを目指しています。生物には精密な設計図であるDNAとこの情報に基づいて作られるタンパク質があります。この機能性のタンパク質の主体は酵素であり、生体内での複雑な化学反応のすべてにこの生体触媒が関与しています。しかも、生体内の反応はすべて常温常圧で行われているにもかかわらず、非常に早い反応です。この巧みな技を工学的なもの作りに応用すれば、環境に優しいグリーンケミストリーが実現できます。そんな夢の実現にむけて学生と教職員が一丸となって日々頑張っています。天野研究室では、地球上で最も豊富に存在する有機物であるセルロースを研究対象にしています。セルロースなどの天然高分子は太陽の恵みを受けて固定されたエネルギーの源です。これを利用すれば、エネルギーはもとより、有機材料、または食品素材まで作ることが可能です。このように地球に優しい材料開発を通して、地域、日本あるいは世界の持続的な発展を支えていきます。化学は地味ですが、今日の近代社会の機能性の材料を通して社会に貢献しています。今後はさらに環境に配慮した技術開発が必要となりますので、卒業生の活躍の場は無限です。天野良彦教授信州大学大学院工学系研究科修了、博士(工学)1995年より信州大学工学部助手・助教授を経て2005年に教授。2010年から地域共同研究センター長(兼任)専門:生物工学(特に酵素化学)生体触媒の基礎と応用について研究。カーボンナノチューブ複合セラミックスは、セラミック人工関節の長寿命化、雲母複合セラミックスはセラミック歯科材料の高精密化、を目的に研究しています。その他にも、人工骨や再生医療には欠かせないスキャホールドなど、セラミック生体材料の高性能化に関する研究を行っています。雲母のイオン伝導性に関しては、高プロトン伝導が得られるなら燃料電池の固体電解質への応用、また、透明な雲母材料は発光も可能で、白色LEDなどの新規発光体としての応用、が期待できます。これまで考えてもいなかった分野へ、雲母を応用することを思案しています。材料化学は、幅広い分野の内容を含みますので、それらの知識・経験を身につけることで、どんな分野の製造業にも対応できます。卒業生・修了生の多くは、いろいろな製造業へ就職していますが、特に、修了生は化学・材料分野の企業への就職が多い傾向にあります。樽田誠一教授長野県屋代高等学校卒、横浜国立大学工学部卒、東京工業大学理工学研究科修士課程修了、同博士課程中退、信州大学助手、講師、助教授を経て現職。専門は無機化学、無機材料化学、セラミックプロセッシング、セラミック物性。⽣物の機能を活かしたものつくりを!-遺伝⼦・タンパク質から化学プラントまで-セラミックプロセッシングを駆使した新材料の創成。⾮常識な材料をめざしてセラミックスの亀裂の進展を妨げているカーボンナノチューブ2m5mm市販のドリルで穴が開くジルコニアセラミックスセラミックスは有用な性質や機能がたくさんありますが、「脆いこと」と「加工が難しいこと」が、大きな弱点です。樽田研究室では、セラミックスへカーボンナノチューブや雲母などを複合化して、脆さを改善する研究や機械加工を可能にする研究に取り組んでいます。雲母は化粧品や塗料など様々な分野で応用されている物質で、物質工学科では前身の工業化学科・合成化学科の時代から雲母に関する研究を継続して行っています。樽田研究室でも、雲母に関する研究を引継ぎ、上記の雲母-セラミックス複合体の他に、雲母のイオン伝導や透明な雲母セラミックスなど、雲母の常識を覆す研究に取り組んでいます。42

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