2015工学部研究紹介|信州大学
41/76

茅葺屋根の民家に地震計を設置し、地震時に建物がどのように揺れるかを計測している白川郷の合掌造り民家の耐震性能を明らかにするために、合掌造り独特の造り方である板壁と柱のフレームを用いて実験を行う松⽥研究室研究から広がる未来卒業後の未来像建築学科人間と人間との間に存在する仕切り(障子)のデザインに応じて、室空間の利用形態が変容する過程を科学的に分析している研究対象とする空間は住宅・高層建築・小学校や大学・公共(歩行空間やトイレ空間など)、世代は幼児から高齢者までと広範柳瀬研究室研究から広がる未来卒業後の未来像建築学科日本には多くの木造建築があります。一口に木造建築といっても、民家や社寺のような昔ながらの建物、現在建てられている一般的な木造住宅、学校などの規模の大きな建物と実に様々です。この中でも特に日本の文化を受け継ぐ方法で建てられた伝統木造建築の耐震性能に関する研究に取り組んでいます。伝統木造建築は地震に弱い?、でも残っている建物もたくさんあります。伝統木造建築は地震に強い?、でも倒れてしまった建物もたくさんあります。本当のところはどうなのでしょう?研究には、こうした疑問を工学的な手法を用いて解き明かしていく面白さがあります。民家、社寺など日本の文化を受け継ぐ伝統建物は今もなお生き続けています。現在では木造建築の研究が進み、ビルやドームなど様々な建築が木造で建てられています。一方で伝統建物の構造の仕組みはよく分からない部分が多いのも事実です。美しい伝統建築を保存・活用する、あるいは今後も建てていくにはどうしたらよいかというテーマは、今の時代だからこそ夢があり、未来につながるものです。木造建築、構造の基本的な考え方を理解しながら研究を進めることで、伝統木造建築の保存や設計に携わることや、木造建築を中心とした構造設計の分野での活躍が期待されます。松田昌洋助教東京大学国際都市再生研究センター特任研究員、東洋大学木と建築で創造する共生社会研究センター研究助手を経て2011年より現職。木構造、主に民家などの伝統木造建築の耐震性能に関する研究に従事。上述した研究に取組むにあたっては、人間が知覚・認知している環境について理解を深めることが大切です。例えば、物理的に2倍明るい環境を、人間が2倍明るいと感じることは稀です。一方、階段の蹴上げやベンチの座面寸法などを数cm変化させた場合などは、その違いを非常に敏感に感じ取ります。人間の知覚・認知システムは、思っている以上にいい加減かつ精巧な側面を持っています。なぜ?どのような条件で?そして、その性質について実験心理学的手法を用いて研究し、より良い構築空間をデザインするために活かす資料づくりが、求められています。総合建設業・設計事務所・ハウスメーカー・行政機関・地方自治体など、自らの希望に応じて、建築に関係する幅広い分野へ就職しています。いずれの分野においても、学際的な視点から建築・都市空間について考えを深める研究経験は役立ちます。人間は自らが過ごす環境を構築するチカラを持っていて、自らがより良く感じられる環境づくりを継続してきています。しかしながら、その目的に根ざして構築された環境が思い通りに機能しないこと、新たな問題を生み出すことは少なくありません。これらの問題について考えるためには、物理的な環境を詳細に調べるだけでなく、心理的(人間の頭の中につくられる)環境の特性を把握して、それらの対応関係を慎重に推察する手続きが欠かせません。柳瀬研究室では、建築空間や都市空間を対象に『人間—環境系に関わる研究』を行っています。柳瀬亮太准教授2001年、早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程修了、博士(人間科学)取得。2002年、信州大学に着任し、現在に至る。専門分野は、環境心理学、認知心理学。人間と環境の相互作用について研究。伝統⽊造建築が地震に耐える仕組みを⼯学的な視点で考えるより良い環境をデザインするそのために「⼼理的環境」を探究する39

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です