2012環境報告書
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昨年の福島原発事故以来、放射線の測定に大きな興味が集まっている。広い意味で環境(放射線)の測定は重要な開発項目と考えられる。そこで研究室で使われているPET装置用の高密度無機シンチレータと新型光半導体素子を用いて小型で高い検出効率があり、さらにエネルギー測定により核種の同定が可能な放射線測定装置を設計製作し、動作の検証を行った。読み出し回路はすべて市中で調達し、9cm×7cmの基板におさめる事ができた。また光半導体の持つ温度特性をバイアス電圧用昇圧回路の温度特性でキャンセルさせる工夫を導入して安定動作を実現した。市販されているGM管型の簡易放射線検出器に比べて4倍程度の検出効率をもち、Co-60を分離可能である事を示した。MPPCを用いた小型放射線検出器の製作と性能評価小倉 義隆卒業論文理学部 物理科学科放射線検出器の写真、左の黒い部分が放射線センサー、右の基板でバイアス電圧を作り、センサーからの信号を増幅、整形する。Co-60線源の出す662keVガンマー線の波高分布、赤の山が相当する。2-1 環境教育 温暖化により気温が上昇すると、緯度傾度にそった植物の分布域は北上すると考えられている。もしそうならば、現在の分布北限では個体の成長は増加する一方で、分布南限では低下することが予測される。そのことを明らかにするため、広い緯度帯に分布しているシロイヌナズナを用いて温度条件に対する成長応答の比較を行った。この研究では、高緯度帯(北緯60度)、中緯度帯(北緯45度)、低緯度帯(北緯30-15度)に自生している9つのエコタイプを使い実験を行った。それぞれ、自生地の夏の平均気温とその温度+2.5℃の2つの温度条件で栽培を行い、成長応答を緯度帯ごとに比較した。自生地と同じ温度条件下で育成した個体と温度上昇した条件下で育成した個体の成長応答の違いを調べるため、地上部の総個体重を測定した。自生地の温度条件では、総個体重は低緯度のエコタイプほどが高い値を示した。自生地の温度+2.5℃の条件では、どの緯度帯のエコタイプも自生地よりも総個体重は増加したが、その増加率は高緯度のエコタイプほど高かった。この結果から、温暖化により気温が上昇した場合、低緯度帯に分布している植物は総個体重に変化はあまり見られず、逆に高緯度帯に分布している植物は大きくなることが示された。植物の分布域の移行は植物の成長だけで決まるものではないが、高緯度帯に分布している植物ほど成長応答がよいという結果は気温が上昇したとき植物の分布が北上する可能性を示唆している。シロイヌナズナの温度に対する成長応答の緯度傾度にそった比較立木 宏幸卒業論文理学部 生物科学科卒業論文29

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