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信州大学ビジョン2015・アクションプラン

【1】ビジョン策定にあたって

21世紀の人類社会は、人口、食糧、環境、資源エネルギー、感染症などかつて経験したことのない地球規模で解決しなければならない諸問題に直面しており、人々はその叡智を結集し、これらを克服することにより、世界の持続的発展をめざそうとしています。

我が国においても、このような世界的な諸問題に加え、グローバル化、知識社会の到来、社会の情報化などにより、社会システム改革と科学技術革新が一体的かつ急速に進展し、今、まさに歴史的転換期を迎えているといえます。

大学には、これらに対応できる教育力、研究力の一層の強化とその活動のグローバル化が強く求められています。

このような状況下で、大学の新しい時代における教育の基本理念として、教育基本法の中に、学術の中心として高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探求して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与することが明示されました。

現在、競争力の基盤となる優れた人材の育成、社会で指導的役割を果たす人材の育成およびイノベーションを生み出す世界トップレベルの教育研究の拠点形成の視点から対象大学を選別し、重点投資による育成強化を通じて徹底的な大学・大学院改革が行われようとしています。

国立大学は、法人化後、従来の護送船団方式から競争的環境におかれ、その自立化が強く求められています。

また、高等教育財政においては、基盤的経費の削減に対して、教育と研究の両面における競争的資金の拡充が検討されるなど、大学間の競争は、国公私立を越えて一段と激しさを増しています。

加えて、18歳人口の減少を背景に入学志願者全入時代を迎え、大学間格差は急速に進行しています。特に地方大学の現状は危機的状態にあるといわざるを得ません。

信州大学は、今、このような著しい変貌を見せる国内外の社会的動向を展望し、「理念と目標」のもとに、人材の育成と知の創造を通した人類社会の持続的発展の実現への貢献を意図して、ここに「信州大学ビジョン2015」を策定します。

本学は、このような内外の厳しい環境に屈することなく、むしろ飛躍への機会としてとらえ、歴史と立地条件を活かし信州ならではの我が国唯一の教育研究領域を開拓し、これを軸に世界のオンリーワン、ナンバーワン分野を築くことをめざします。そのために個性豊かな学部が協働し、総合力と相乗効果を発揮させ、教育研究にキラリと光る特色をもたせ、地域とともに成長し、世界へ飛翔する"オンリーワンの魅力あふれる地域拠点大学"をめざします。

「信州大学ビジョン2015」は、学長のリーダーシップのもと、2015年に向かって全学の構成員が新たな可能性への挑戦を企図するための目標を骨子として策定したものです。

なお、「信州大学ビジョン2015」の推進に当たっては、その施策内容や方法などについて、社会環境の変化に常に弾力的に対応していくこととします。

【2】信州大学の特色 ~歴史と現状~

信州大学は、昭和24年5月に長野県内の旧制高等学校や高等専門学校、師範学校などを前身として、それぞれの地にキャンパスを置く新制の国立大学として発足しました。以来、各学部、大学院などの改組拡充が行われ、現在の8学部、8大学院研究科を有する総合大学へと発展してきました。

各キャンパスは、日本の屋根である日本アルプス、それらに源を発する8水系、上高地、安曇野、軽井沢など豊かで美しい自然環境、そして、善光寺、松本城、上田城、飯田・下伊那周辺に伝承される民俗芸能などの歴史的遺産や伝統文化にも恵まれています。

また、諏訪地域などではじまった製糸業は、豊かな自然の中で育まれた繊細な気質を生かして精密機械工業へと展開し、さらにエレクトロニクスや精緻を極めるナノテクノロジーへと発展しています。各キャンパス周辺には、このような特色ある先端産業の集積地が形成されるとともに、高速道路や新幹線により首都圏や中京圏とを結ぶ交通網が整備されています。

発足以来、本学は地域に立脚した県内唯一の総合大学として幅広い分野に多くの優れた人材を輩出するとともに、「地域に根ざし、世界に拓く」を標榜し、地域の「知」の拠点として、信州の歴史や文化、自然や気候風土に根ざした特色ある先進的研究成果を広く国内外に発信しています。

特に近年は、ファイバー工学、ナノテクノロジー、ものづくり、健康と長寿、高度先進医療、機能性食料、山岳科学などの分野において国内外からも注目され、地域に根ざした新たな分野として地域ブランド、イノベーション・マネジメントなどの分野においても特色ある成果を挙げています。

また、学生は、長野県内はもとより日本全国および東アジアを中心に世界各国から信州の地に集まり、意欲的に勉学に励んでいます。全学生は、1年次に全学教育機構における学部の壁を越えた教養教育の履修や生活を通して「信大生」としてのアイデンティティーの基盤を培います。

特に、本学では、これまで信州のフィールドを活かした"体験型教育"および恵まれた自然環境の中で"環境マインドをもつ人材養成"に力をいれてきました。この一環として、全キャンパスで国際環境規格ISO14001の認証を取得し、エコキャンパスの構築を行っています。このような"環境マインド教育"は豊かな人間性、社会性をも育むものであり、自然と社会と個人の調和をめざす信州大学の特色ある活動の一つになっています。

本学は、このような豊かな自然環境と多様な歴史的・文化的資産、その地理的立地条件を活かした「知の創造・伝承とその広い活用」により、地域および人類社会の発展に貢献しています。

【3】信州大学のめざすもの

信州大学は、「信州は、我らのキャンパスだ!」を合言葉に、「オンリーワンの魅力あふれる地域拠点大学」をめざして

1. 未来の社会を展望した有為な人材教育の実践
2. 地域に根ざし世界に拓く研究拠点の形成
3. 豊かな地域社会の創造に向けての協働と貢献
4. 社会環境の変化に柔軟に対応する大学経営の推進

に取り組みます。

1. 未来の社会を展望した有為な人材教育の実践

高等教育を享受する者に期待されているのは、豊かな人間性と諸々の高度な知的技術的能力を身につけることにあります。また大学の教育は、「豊かな自己実現をめざす高度な能力の獲得」という学生の個人的要請に応えるのみならず、「持続可能な発展をめざす社会の担い手としての人材の育成」という今日の高等教育機関に課せられた社会的要請に応えるものでなければなりません。

信州大学は、学生の視点に立ち、その自己実現を支援し、優れた社会的課題解決能力などの人間力と豊かな人間性を備え、社会で指導的役割を果たしうる人材を育成することを教育の中軸とします。そのために信州大学は自らの理念と目標に立ち、構成教職員の有する多様で豊かな教育力と信州の自然、社会、歴史、文 化などの環境を最大限に活用して教育活動に努め、特に信州のフィールドを活かした"環境マインド教育"や"体験型教育"など独自の人間力養成教育を強力に推進します。

また、信州大学の教育においては、最新の情報通信技術(ICT)の積極的な活用(キャンパス間ネットワーク)など教育実施体制の整備充実に取り組みつつ、学生の修学支援を最大限行います。

(1)真理の探究による知の創造の成果に基づく教育の実践

<アクションプラン>
人類の知と文化創造の歴史に関する理解を深め、それを自らの力とする教育課程を編成し、実施する。
社会人としての基礎的、実践的能力を涵養する教育を推進する。
環境マインド教育を推進する。
信州の自然、地域の特色を活かした教育を推進する。
時代の変化を見据えつつ、教育課程を不断に見直す。

(2) 地域社会および国際社会で活躍できる高度専門人材の育成

<アクションプラン>
大学院を軸に地域社会および国際社会で活躍できる語学力、情報収集・分析能力を備えた高度専門人材を育成する。

(3) 生涯学習の支援と社会人再教育

<アクションプラン>
県内自治体および教育機関等との生涯学習ネットワークを構築する。
生涯学習ニーズに応えた社会人向け教育コースを整備する。

(4) 入学者受入方針に即した学生の受入れ

<アクションプラン>
多面的な評価を重視しつつ、学生の受入れ方法を不断に見直す。
大学、学部、研究科の魅力を明示する。
地域社会や産業界の要請に柔軟に対応するため、カリキュラムを不断に見直し、社会人の受入れを促進する。
国際化時代に対応し、外国人留学生の受入れを促進する。

(5) 教育の「質」の保証

<アクションプラン>
学士、修士、博士課程において学位授与方針に沿った教育課程を構築し、不断に点検評価する。
学位の国際通用性の確保を重視した教育課程を構築する。
教育者としての大学教員の資質を高める教育プログラムを体系的に実施する。

(6) 教育実施体制の整備充実

<アクションプラン>
社会が求める人材育成に応じる教育機能の強化のための検証を行い、これを踏まえて教育実施組織を見直す。
教育力の向上のために県内外および諸外国の大学との連携を推進する。
学生の視点に立った総合的な支援を行う。
教育の場としての寮を整備する。
学生の留学や教職員の海外派遣、留学生や海外からの研究者等の受入れのための体制・環境を整備する。

2. 地域に根ざし世界に拓く研究拠点の形成

信州大学は、人類の知のフロンティアを切り拓き、自然との共存のもとに人類社会の持続的発展をめざした独創的研究を推進し、その成果を広く提供することに より、地域と世界に貢献します。

また、研究者を大切にし、若い才能をひきつける研究環境を築くことを目標に、長期的視野に立った基礎研究を着実に推進するとともに、地域に根ざした我が 国唯一の研究分野、世界的教育研究拠点をめざす分野の研究を推進します。

本学の研究の特色と今までの実績を踏まえ、重点分野への集中を図り、ファイバー工学、ナノテクノロジー、ものづくり、健康と長寿、高度先進医療、機能性 食料、山岳科学(里地・里山を含む)などの分野の優れた研究、さらに地域に根ざした新たな分野として地域ブランド、イノベーション・マネジメントなどの分 野の研究を推進します。併せて、これを基盤に優れた人材を育成し、新たな「知」を生み出すことにより、象徴的世界的研究拠点を形成します。

(1)長期的視野に立った基礎研究の推進

<アクションプラン>
教員の自由な発想に基づく研究を推進し、多様な知の蓄積と革新をもたらす。
長期的視野に立った学問分野横断型の研究プロジェクトに挑戦する。
国内外の大学、研究機関などとの連携により、特色ある研究拠点の形成を目指す。

(2) 信州の自然や生活環境に根ざしたモデル研究の創出と世界展開

<アクションプラン>
地域に根ざした研究を基盤に国内外の研究拠点への展開を図る。
地域の特性を活かした健康で豊かな社会の形成に貢献する研究を推進する。

(3) グローバルな教育研究拠点の形成とネットワークの構築

<アクションプラン>
世界最高水準の教育研究拠点を形成する。
国内外の優れた研究機関と協働し、研究推進において世界的リーダーシップを発揮する。
世界トップレベルの研究者を受け入れる。
若手研究者が研究に専念できる環境を整備する。

(4) 学内高度研究特区などの設置を通じた研究推進

<アクションプラン>
産学官協働による地域活性化のための特区を整備する。
大型競争資金の獲得による拠点形成など、研究優先組織の特区を整備する。

(5)「知的財産」の重視と円滑な「知的創造サイクル」システムの構築

<アクションプラン>
多様な知的財産の発掘から活用までを円滑に機能させる仕組みを構築する。
知的財産に係る専門的人材を育成する。

(6) 研究環境の整備

<アクションプラン>
施設マスタープランおよび設備マスタープランに沿って研究環境を整備する。
他研究機関との連携を強化し、研究機能を補完する。

(7) 研究資金の自立的獲得の支援

<アクションプラン>
資金獲得情報の収集・発信、申請手続きなどのサポート体制を一層充実する。
地域産業界、地方自治体などとの共同研究、およびこれらからの受託研究受入をさらに推進する。

3. 豊かな地域社会の創造に向けての協働と貢献

信州は、澄んだ空気、清い水、青い空など美しく多様性に富んだ豊かな自然環境の中で、各地域特有の歴史と文化・伝統を築き個性豊かな圏域を形成しています。
信州大学は、県内各地域でそれぞれ特色ある「知」の拠点としての役割を担って設立された伝統ある前身の高等教育機関を統合し設立された総合大学です。 信州にある唯一の総合大学として、県内全域への教育拠点づくりや地域のブランドづくり、街づくりなどにも積極的に関わっていきます。

これらの活動を通じ、信州を中心とした「知」の拠点として、地域と協働し、教育、文化、産業および健康・医療・福祉の基盤を支え豊かな社会の創造に貢献することによって、人々に信頼され、愛される大学として信州とともに発展していきます。

そのためには、大学が生み出した知識から革新技術や新産業の創出を通じて地域経済の活性化や人々の質の高い豊かで安全な生活の実現および魅力ある地域社会と文化の創造に協働します。

(1) 信州を中心とした地域連携による、教育および文化の拠点としての機能強化

<アクションプラン>
知識、技術、情報、施設などの提供・発信を通し、地域の教育文化の向上に寄与する。
地域の事情に精通したシンクタンク機能として地域の課題に取り組むなど、地域への貢献活動を積極的に行う。
地域社会が多様な文化をもつ外国人と共生できるよう、その国際化を積極的に支援する。

(2) 産学官連携強化による、産業振興と力強い地域経済構築への協働

<アクションプラン>
産学官連携により、地域の産業振興に寄与するプロジェクトを推進する。
広域的産学官連携を深化・発展させ、地域イノベーションの創出に貢献する。
産学官連携教育により、産業振興人材を育成する。

(3) 高度な先進医療の提供、医療人の育成および健康増進のための地域システムの構築

<アクションプラン>
高度な先進医療を提供し、地域医療水準の向上に寄与する。
地域医療機関との連携、協力を図りつつ、医学部および病院の特色を活かした医療人を育成する。
健康で安全・安心な地域づくりのためのモデルを形成する。

(4) 信大サポーターのネットワークづくり

<アクションプラン>
卒業生、在校生(保護者を含む)、地域住民によるサポーターのネットワークを充実する。
開かれた「知の拠点」として知的情報を発信し、信大サポーターのネットワークをさらに拡充する。

4. 社会環境の変化に柔軟に対応する大学経営の推進

本学は、大学を取り巻く社会環境が著しく変化する中で、学長のリーダーシップのもと「信州大学ビジョン2015」の達成に向けて効果的かつ効率的に取り組 んでいくため、教職員の意識改革に努めるとともに、広く内外の状況に目を向け、変化に柔軟に対応する自立的な大学経営を推進します。

また、地域社会の信頼に応え、その理解と支援のもとに経営基盤の強化とキャンパス環境の整備充実に努めます。

(1) 社会的使命を踏まえた自立的な大学運営

<アクションプラン>
学長のリーダーシップによる戦略的な組織運営を行う。
効率的な大学運営のため情報を共有し、活用する仕組みを整備する。

(2) 財政基盤の強化

<アクションプラン>
戦略的な財務運営を推進する。
外部資金や競争的資金の獲得を強化する。
コスト意識の徹底と費用対効果を考慮した効率的な運営を推進する。

(3) 多様なニーズに応える人事システムと柔軟な組織の構築

<アクションプラン>
多様なニーズに対応できる柔軟性の高い人材や高い専門性を備えた人材を育成する。
透明性、公平性の高い人事制度を整備する。
国際性や専門性を備えた人材を登用するとともに、テニュアトラック制度を整備する。
効率的な業務運営を推進するため、柔軟な組織編成を行う。

(4) 病院経営の基盤強化

<アクションプラン>
広域の健康・医療システムの中核機関としての経営戦略を構築し、推進する。
学外有識者、専門家などの参画により経営部門を強化する。
増収および業務の効率化により、病院財政の健全化を図る。

(5) ブランド・マネジメントの推進

<アクションプラン>
大学のブランド戦略を構築し、ステークホルダーを意識した広報活動を展開する。
国内外に対する広報活動を強化する。
学術情報などの情報基盤・メディアを整備する。
説明責任および透明性の確保のための情報発信を積極的に行う。

(6) 安全快適なキャンパス環境の整備

<アクションプラン>
各キャンパスの個性を大切にした整備を行う。
現状資産を有効に利活用し、アメニティ(環境の心地よさ)を高めるための整備を行う。
地域社会との連携・交流の推進に配慮した整備を行う。
学生・教職員の参加によるキャンパスづくりを推進する。
エコキャンパスづくりなど、サスティナビリティ(持続可能性)の観点を重視した整備を行う。
誰もが使いやすいキャンパスづくりを推進する。
防災、防犯を考慮した安全なキャンパスの整備を行う。