固体酸化物燃料電池

Solid Oxide Fuel Cell (SOFC)



1.はじめに

 高効率な発電システムの研究は限りある化石燃料を有効に使うために、また移動媒体に必要な動力源として重要です。化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換できる燃料電池はその変換効率の高さから開発が期待されています。
 燃料電池の中でも固体酸化物型燃料電池(SOFC)は最も効率が高い燃料電池です。さらに,SOFCで電気に変えられた以外のエネルギーを利用して地域冷暖房や蒸気タービンなどとして利用するコジェネレーションを行うことで熱・電気総合効率を80%にすることも可能です。
 しかし、SOFCを実用化するには現在の作動温度は1000℃と高く、経済性、信頼性に問題があります。この作動温度を800℃以下に下げること及びセルの形状を小型化することでSOFC大規模利用(自動車用、分散電源用)が可能となります。低温作動実現のためには電極反応機構の解明が重要であり、解明された反応機構をもとに、効率低下を抑制するために新たな構造、材料の開発研究を行うことが必要となります。それに加えて,発電システムが実用化されるためには経済性、環境負荷の面からの評価も行わなくてはなりません。そして,それに基づいて開発目標を明確にする必要があります。

2.固体酸化物燃料電池とは

 燃料電池は、反応物質(燃料)と酸化剤(空気)を電池内部に供給することによって、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換し、発電する電池のことです。固体酸化物燃料電池は、電解質に固体酸化物を使用する燃料電池のことをいいます。

 固体酸化物燃料電池の基本単位の単セル(単電池)は

(−) 燃料(H)、電極(燃料極) | 固体酸化物(電解質) | 電極(空気極)、空気(O) (+)

となります。

 以下に、固体酸化物燃料電池の作動原理を示します。

燃料電池の反応は、酸素1モル当りの反応で表すと、次のようになります。

上の反応式は、空気極で酸素Oが酸素イオンO2−になり、O2−が固体酸化物電解質を通り、燃料極で水素Hと反応して水を生成することを表しています。固体酸化物は電子を通さないので、燃料極で生じた電子eが回路を移動して、空気極で再び酸素をイオン化することによって回路に電流が流れ、電池となります。

3.研究概要

(1) SOFC電極反応のモデル化による反応機構解明
 LaSrMnO3といったペロブスカイト酸化物はSOFCの空気極材料として用いられています。また,Co系のペロブスカイト酸化物は混合導電性を示し,より低い過電圧を示すことで知られています。我々はこれらの物質のイオン導電率,吸脱着定数などの物性と,これを用いて形作られる電極構造がどのように過電圧に影響を与えているかについて明らかにするために電極のモデルを構築して調べました。インピーダンスの解析から気固反応、電荷移動などがおきる三相界面長さや電極表面積の影響を定量的に明らかにし,必要な電極構造の解明を行っています。また,アノードにおける反応は水蒸気が過電圧に及ぼす影響が大きく,これらの反応をモデル化することにより,最適な構造や物性を明らかにし,高効率化な発電を行うための研究を行っています。

(2) SOFC新規電極材料の開発
 電極材料に求められる性能は反応活性だけでなく,他の構成材料と熱膨張率が一致すること,オーム損を少なくするために電子伝導性が充分に高いことなども求められます。われわれはこれらの条件を満たすような新規のペロブスカイト酸化物の探索を行っています。

(3) 燃料電池発電システムの設計及び評価
 燃料電池を実用化するためには,発電システムを設計し評価を行う必要があります。熱交換器まで含めたSOFC発電システム計算を行い,効率,コスト,CO2排出に関して評価した結果,管径の小さな円筒型セルを用いることでLCA的に低コスト,高効率な発電が可能となることを明らかにしています。また,SOFC発電システムとガスタービンとの複合発電システムの作動温度や燃料組成条件を変化させ発電特性やエネルギー効率を計算し、プラント規模で詳細に発電特性やコストエネルギーなどを評価しています。

 

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