一般にメタノールを燃料として直接用いる燃料電池のことを、ダイレクトメタノール燃料電池 (DMFC)と呼んでいます。現在、性能が格段に進歩している固体高分子燃料電池(PEFC) にこの方式を用いることで、システムの簡略化が可能になります。しかし、燃料がメタノール に変わることにより、新たな問題が発生してしまいます。
DMFCの利点
・貯蔵や運搬が困難な水素を必要としません。
・メタノールから水素をたくさん含む改質ガスをつくる、大掛かりな装置が不要です。
DMFCの問題点
・電極触媒の性能が不充分です。
・アノード側の触媒が、特にCOによって汚染されます。
・メタノールが電解質膜を透過してしまいます。(クロスオーバー)
アノード反応 : CH3OH + H2O → CO2 + 6H+ +
6e-
カソード反応 : 3/2O2 + 6H+ + 6e- → 3H2O
全体の反応 : CH3OH + H2O → CO2 + 3H2O
2.燃料電池の構成要素
2−1.触媒
300℃程度以下で作動する燃料電池では、触媒を用いて電極反応を促進してやら
ないとよい特性は得られません。この場合、触媒は電池反応に対して活性であるばかり
でなく、副生成物によって被毒されにくい必要があります。
Ptはアノード触媒として優れた金属で、メタノールとの一般的な反応機構は次のよ
うになっています。(1)-(5)
Pt + CH3OH → Pt-CH2OH + H+ + e- (1)
Pt-CH2OH → Pt-CHOH + H+ + e- (2)
Pt-CHOH → Pr-COH + H+ + e- (3)
Pt-COH → Pt-CO + H+ + e- (4)
Pt-CO + H2O → Pt + CO2 + 2H+ + 2e- (5)
しかし、この反応はPtのみでは十分でなく、COによる被毒を引き起こします。Pt表面にCO
が吸着することによって、メタノールと反応する面積が減ってしまい、電池の性能を
低下させてしまいます。
触媒がCOで被毒されるのを防ぐために、Ptの表面構造を改良したり、異なる金属を
加える方法があります。Ruは加える成分として、幅広く認められています。Ruは
まず、水を解離させOH種を作ります。また、RuはPtに比べてOH種で覆われやすく、メタノール
が改質された場合に生成されるCOの酸化を補います。(6)(7)
Ru + H2O → RuOH + H+ + e- (6)
Ru-OH + CO → Ru + CO2 + H+ e- (7)
しかし、Ru表面はPtよりもメタノールに対する触媒活性が低くなっています。他にSn、
Wなどの金属を加えた触媒も試されています。
また、アノードとカソードの両方にPtなどの貴金属をつかうので、コストの面から
なるべくその使用量を減らさなければなりません。
2−2.電解質膜
触媒活性を上げるためには、電池の温度を上げなければならないので高温(200 ℃程度)にも耐え、安定な膜が必要です。固体高分子型燃料電池(PEFC)の電解質 膜(ナフィオン)は、100℃以下で用いられておりDMFCが必要とする温度には耐え られません。