研究内容
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カーボンナノチューブ電池/キャパシタによるエネルギー貯蔵・変換
カーボンナノチューブは 21 世紀初頭の科学と技術を拓き支えるナノ材料・ナノテクノロジーの 1
つとなり得るかもしれない。この夢の実現に向けた基礎研究 --エネルギー貯蔵・変換材料としての機能探索-- を行っている。
カーボンナノチューブ膜はその形態からも想像できるように、ナノ空間、メソ空間に高密度でイオン貯蔵が期待でき、これを電極として組み込んだ電池、電気二重層キャパシタ、燃料電池の構成が容易で、その電気化学的性質を詳細に調べることが可能である。このことは、カーボンナノチューブの物性化学的領域を広げ、エネルギー貯蔵・変換などの機能探索にもつながる。例えばリチウムイオン二次電池が考えられる。
リチウムセル [CNM/LiClO4-EC+DEC/Li (CNM: carbon nanotube membrane)]
を試作し、充放電特性を調べたところ、 720 mAh/g
という高容量のリチウムイオンのインターカレーション・ドーピング現象が見出された。グラファイトの理論容量の 2
倍近い値であり、これが可逆容量につながれば、高エネルギー密度二次電池が期待される。
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フッ素を含む新規グラファイト層間化合物の合成、結晶構造、エネルギーバンド構造、物性と機能発現のメカニズム解析
単体フッ素のインターカレーション反応のプロセス制御とホストグラファイトの構造的性質(カーボンファイバー、HOPG、フラーレン
C60,
C70)を選択することにより、組成、結晶構造、電子構造が広範囲に制御されたフッ素-グラファイト層間化合物 CxF
(1 < x < 20)
を合成する。得られた一連の物質群について、絶縁体、半導体、高電子伝導体材料としての物性・機能を評価するとともに、機能発現のメカニズムを解明する。
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無水フッ化水素溶液系を用いた金属フッ化物のインターカレーション反応の設計と制御
最近開発された新作製プロセス (MFy + F2 + HF
溶液系におけるインターカレーション)によれば、種々の金属フッ化物-グラファイト層間化合物
CxMFy+z (MFy = SbF3,
SnF4, PbF4, PdF4, CrF4,
NiF4, z = 1 〜 2) の生成反応の設計が可能で、多様な構造と機能を有する新規物質群が合成されつつある。
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フッ素系グラファイト層間化合物を正極とする高エネルギー密度リチウム電池に関する研究
標準電極電位から考えるとフッ素とリチウムの組み合せは高出力、高エネルギー密度電池の構成として理想的である。このような電池は、極めて活性なフッ素をグラファイトというマトリックスに固定することによって実現する。この指導原理に基いて、種々の
Li | 1M LiClO4-PC | CxF, CxMFy
(PC: Propylene Carbonate)
セルを構築し、その電池特性を系統的に調べ、高エネルギー密度リチウム電池正極として最適な格子構造、電子構造、C-F 相互作用を探索している。半イオン性 C-F
結合をした C2F 正極を用いた場合、 1995 Wh/kgという極めて高いエネルギー密度が達成されている。
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高分子固体電解質とフッ素化層状化合物を用いた全固体電池に関する研究
コードレス機器の電源として、高エネルギー密度小型電池の開発が時代の要請となっている。これを実現し得る電池構成として、ポリエーテル系およびポリフォスファゼン系高分子に
Li+ をドープして調製した高分子固体電解質を隔膜とし、共有結合性層状化合物 (CF)n、
(C2F)n
を正極活物質とする種々のコイン型全固体電池を構築し、その電気化学的特性を評価する。これまでに、起電力 3.5 V、エネルギー密度 1250 Wh/kg
の室温で作動する全固体電池が開発されている。
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フッ素イオン伝導性固体電解質の創製と二次電池システムの開発
インピーダンス測定や電位走査法によりイオン性フッ素-グラファイト層間化合物 CxF、三元系金属フッ化物
PbxSn1-xF4 の F-
イオン伝導度を測定し、イオン伝導体としての機能を評価し、イオン伝導度が最大値を示す CxF、
PbxSn1-xF4 を設計する。これらを組み合せて全固体二次電池
CxF | PbxSn1-xF4 | HOPG
を構成し、性能を評価する。
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二次元磁性体、二次元金属クラスターの作製と物性
PdF62-、NiF42-、
CrF5- 等の磁性イオンを挿入種とする層間化合物 CxMFy
を合成する。さらに、これらの化合物を電気化学的に還元することにより金属-グラファイト層間化合物 MxC
の合成を試みる。これら二次元磁性体(二次元スピン配列)、二次元金属クラスターの磁気的性質をはじめとする各種物性をバルク結晶のそれと比較し、物質の次元性と物性との相関を明らかにする。
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グラファイト層間化合物における二次元相転移と電子物性に関する研究
デバイ・シェラー法、ギニエ法、ラウエ法、プリセション法等のX線回折法を駆使して、銀や銅に匹敵する高い電気伝導性を示す合成金属として多大な注目を集めている
CxAsFy, CxSnFy
の低温における超格子構造を調べ、熱量測定とあわせて二次元相転移(秩序-無秩序転移)の本質を明らかにする。また、真空紫外スペクトルや光電子スペクトルから電荷移動量やフェルミレベルでの電子状態密度を評価し、高電導性発現のメカニズムを解明する。
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炭素クラスター・フラーレン (C60、
C70)へのハロゲン元素、アルカリ金属のドーピング、付加反応による π 電子系の物性制御と機能発現
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リチウムイオン二次電池用炭素負極の研究
リチウムイオン二次電池ではリチウムが安全かつ有効に取り扱えるようにグラファイトにリチウムを挿入した化合物を負極に用いている。そのグラファイトのかわりに活性化炭素繊維(ACF)やメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)をフッ素処理することによりマイクロポア(細孔)を制御し、高い容量、可逆性をもつリチウムイオン二次電池用負極を開発する。
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ダイヤモンド、アモルファスダイヤモンドおよび DLC (Diamond-like carbon)
の表面改質とデバイス化
ダイヤモンドは硬さやヤング率が最も大きく、熱電導率の最も高い物質である。また、広い範囲にわたって光を透過し、屈折率や反射率の大きい特徴がある。さらに、化学的にも安定で、耐磨耗性や耐溶着性に優れている。しかも、不純物を添加することより、禁制帯幅の大きい半導体になる。このような特性を持つダイヤモンドの表面をフッ素処理して強い
C-F 結合により表面をおおうことにより、ダイヤモンドの潤滑性、耐酸化性、耐磨耗性、耐熱性などを増すことが可能である。
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CVD 法ダイヤモンド合成とフッ素化
化学気相成長 (CVD) 法によりダイヤモンドを合成する場合、水素が共存すると、炭素の sp3
混成を維持し、ダイヤモンドの成長を促進する。原子価が1であるフッ素にも同様な働きがあると考えられる。まず、既に合成されたダイヤモンド表面とフッ素との反応性、表面の構造などを調べ、次に
CVD 法への応用の可能性を探る。
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ダイヤモンド電極を用いたフッ素電解・フッ素製造
ダイヤモンドはボロンをドープすることにより電気伝導性をもつようになり、その化学的安定性から、電気分解としては過酷な条件を強いられる、フッ素電解さらには
フッ素製造用の電極として利用できる可能性がある。電極としては、シリコンやモリブデン上に CVD
法によりダイヤモンドを蒸着したものや単結晶ダイヤモンドを用いる。
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炭素関連物質 hBN,cBN のフッ素化、フッ素系化合物の合成
六方晶系窒化ホウ素(hBN) はグラファイトと、立方晶系窒化ホウ素(cBN) はダイヤモンドと同じ電子配置をもち、炭素関連物質 (Carbon
related materials) とも呼ばれている。hBN はグラファイトと同様、層間化合物を形成し、cBN
はダイヤモンド同様、表面がフッ素の単原子層でおおわれるようになる。hBN, cBN のフッ素やフッ化物との反応性を調べる。
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酸化物系アモルファス材料の原子配列、電子構造に関する研究
アモルファス物質の原子配列を知ることは、その機能制御に不可欠である。本研究室では、X 線回折法、X 線吸収スペクトル (EXAFS)
解析、コンピューターシミュレーションによりこの問題に取り組んでいる。またその電子構造解析を第1原理計算により行っている。
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高圧力を利用した新物質の合成
圧力は温度とともに熱力学における重要な因子であり、化学結合の圧力変化は
科学的に極めて興味深い。本研究室では固体圧縮技術と X 線回折法を組み合
わせることにより、フラーレン重合体 (C60ポリマー) の合成や酸化物セラミックスの圧力による構造変化を調べている。
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酸化物多孔体を利用したカーボンナノチューブの合成
多孔質シリカを鋳型に用い、プロピレンガスを熱分解させることにより孔の内
部に炭素を析出させ、カーボンナノチューブの合成を試みる。
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