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トポロジーと物理

私は物理学に動機付けられて, トポロジーと幾何学を研究してきた.
特に, 最近では, 位相的$K$理論とそのトポロジカル絶縁体の分類への応用を研究している:


トポロジカル絶縁体とは, 物体のある量子状態である. それらはバルクが絶縁体で辺が金属である物質として実験的に観測され,''小さな摂動''に対して''堅牢''であるという意味で''トポロジカル''である. Alexei Kitaevの主要な仕事の一つは, 位相的$K$理論がトポロジカル絶縁体の理論的分類に応用できることを明らかにした.



具体的に, (トポロジカル)絶縁体を, $d$次元格子$\mathbb{Z}^d$上の強結合近似模型で記述しよう.
これは, ハミルトニアン, すなわち, 格子上の$L^2$関数の空間$L^2(\mathbb{Z}^d, \mathbb{C}^n)$として実現される量子状態のHilbert空間上の自己共役作用素$H$が与えられた, ということである. ここで$n$は格子の各サイトにおける内部自由度である.
ハミルトニアンの平行移動不変性などのもっともらしい仮定のもと, $H$の情報は$n$次Hermite行列に値をもつ$d$次元トーラス$T^d$上の連続関数で完全に言い換えができる. 各$k \in T^d$において$\hat{H}(k)$が$0$固有値を持たないとき, もともとのハミルトニアン$H$は絶縁体を記述していると考えることができる.
自明な例は$\hat{H}(k)$が各$k \in T^d$において単位行列というものである. しかし, 他の非自明な例があるかも知れない.
そのような連続関数$\hat{H}$の分類に, $K$理論を応用することができる. 実際, トーラス$T^d$の$K$理論は, そのような非自明な関数$\hat{H}$が``どれくらい多く''あるのかを教えてくれる.
ここで, もちろん, ''無限に多く''の関数があるので, それらの数え上げは, トポロジーにおけるアイデアにもとづいて, 適当な意味でなされている.



トポロジカル絶縁体を実際の物質で実現するためには, しばしばある内部対称性を考える必要がある. さらに, 実際の物質はその結晶構造に由来する対称性を持っている.
同変$K$理論のアイデアを使うことで, $\hat{H}$の分類において, これらの対称性を考慮に入れることができる. 同変$K$理論の計算は, 多かれ少なかれ, 普通の$K$理論の計算より込み入っている.



物理学者との最近の共同研究では, 様々な同変$K$理論を計算してトポロジカル結晶絶縁体を分類し, 興味深い例を発見することができた. しかしながら, 多くの計算されるべき$K$理論が残っており, それらのためにはさらなる$K$理論の研究が必要である. これが私の研究テーマの一つである.

五味 清紀