信州大学医学部歯科口腔外科レジデント勉強会
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Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School
of Medicine
1.理学療法とは
理学療法は物理医学療法のひとつで、関節や筋の運動機能や能力の回復、鎮静を目的に行われ治療法は整形外科とリハビリテーション医学に共通しています。
2.理学療法の分類 (TMDの治療に応用される方法について)
1)物理療法 (狭義の理学療法)
2)運動療法
3)その他 (行動医学療法)
3.各療法について
1)物理療法
熱により血流を増加させることで、障害を受けた筋や関節内に蓄積された有害物質を洗い流し、新鮮な栄養物質を供給する事で治癒を促進させる方法
@熱伝達療法:皮膚表面から1cm以内の咀嚼筋や頚部の筋等の浅部の筋の慢性関節痛、筋肉痛に有効である
<方法> 温湿布-皮膚面温度60℃で1回20分
ハイドロコレーター−咬筋から側頭筋を覆い80℃で稽留
超音波-深部温熱作用があり関節包や筋の拘縮収縮による顎関節症に有効
<禁忌>レイノー現象のような血液循環不足部位、悪性腫瘍存在部位、血友病患者、多出血状態、成長期の小児の骨端
<参考> 冷湿布は普通用いないが、外傷や急性炎症期の症状には用いるA電気刺激法:本法は疼痛緩和に対して有用な補助療法であると共に、腫脹や筋スパズム、炎症、代謝産物の貯留を軽減する効果もある
<方法> 経皮的電気神経刺激(TENS)-経皮的に微弱電流を流し太い求心性の神経繊維(Aδ繊維)を刺激することで痛みの原因である細い求心性の神経繊維(C繊維)の興奮を抑制する。微少電流神経刺激(MENS)-MENSは限界閾値以下で発生する刺激であり、口腔内や頭蓋顔面領域での使用に適している。効果は、刺激領域においてATPが上昇する事が関係しているらしい。
<禁忌> ペースメーカー使用患者、虚血性発作、脳血管の障害、てんかんの既往のある患者Bマッサージ療法:本法が有効な理由は、血液循環を高め老廃物を洗い流すため疼痛が緩和されるところにある。マッサージにより全身的なリラクリゼーションが得らた事により精神的な緊張やストレスから解放され筋の緊張がとれるなどと考えられている
Cスプリント療法:本法に関しては、前回のDr.宮沢のものを参照してください
2)運動療法
積極的に開口訓練をする方法
@下顎可動化療法
<方法>医師が行うもの-左手で顎関節に触れ、下顎頭の動きを確認しながら右手親指を歯列上に置き下顎を保持してゆっくり動かし下顎頭を前方に引く患者自身が行うもの-中指を下顎前歯舌側、親指を上顎前歯切端にかけて、下顎を前方に引きながらこじる(片手)人さし指と親指を使い強い力であける(両手)
補助器具を使用-木片等を加工し上下前歯間に割り込ませるAスプレイ、アンド、ストレッチ
<方法>筋をストッレチしながら筋繊維に沿ってコールドスプレーを直接皮膚に噴射する。すると筋痛の原因であるトリガーポイントが不活化 されて、伸展時の疼痛が緩和されるB関節と筋のエクササイズ:エクササイズは収縮した筋の長さをもとに戻してスムーズに開口できる事を目的とする
<方法>
*等張性エクササイズ-筋性の開口障害、外科療法後のリハビリテ−ション痛みを感じないところまでリズミカルに開口させる-関節性、筋性の開口時の顎変位の改善
患者に両側の下顎頭を触れさせて、両側が同時に滑走するように開口訓練させる
*等尺性エクササイズ-咀嚼筋の筋力増強、筋の協調的な運動能力回復
オトガイ部に指を1本あて、開口運動に抵抗して500〜1kgの力で5秒ほど押さえ、開閉、左右、前方で1セットを5セット行う<ここでちょっと筋収縮について>
等張性筋収縮-屈伸などのリズミカルな運動
等尺性筋収縮-筋の長さを変化させずに収縮する
3)行動医学療法
TMD主な原因は、日中のくいしばりや姿勢の悪さなどの悪習癖だと考えられている。したがって、スプリント療法や薬物療法などの対症療法を行いながらその原因を特定できたら止めるように努力させる。このような方法を行動医学療法といいます。
@認知行動療法:患者に悪習癖を認知させ、正常な状態、有害性、回避法を教育するためのプログラム
かみしめ-【唇を閉じて、奥歯をはなし、顔の筋肉の力を抜く】
姿勢-【胸を張らず、頭を背中の上に置く】 と教えると良いAストレスの管理:患者にストレスが原因でさまざまな筋に緊張が生じる事を説明し、実際に緊張した時、リラックスしている時どのような感覚が生じるかを理解させ自覚できるようにする
B精神科的治療:精神科に依頼してカウンセリングや向精神薬の投与を行う
参考文献 TMDを知る クインテッセンス株式会社
TMDと口腔顔面痛の臨床管理 クインテッセンス株式会社
顎関節症の基礎と臨床 日本歯科評論社
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Department of Dentistry and Oral Surgery, Shinshu University School of Medicine