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基礎研究

微小循環生理学

脳の血液循環が他臓器と大きく異なる点の一つに、autoregulationと呼ばれる自己調節機能がよく知られています。これは正常な状態において血圧がある範囲で変動しても脳血流量を一定に保つように、脳動脈が拡張収縮の自動調節をします。一方、脳の局所においては血液循環と脳の代謝が極めて密接に結びついています。すなわち、脳実質の神経細胞の活動性亢進は同部位に限局した血流量の増加を起こします。この神経活動と血液循環との、時間的・空間的に緊密な関係はneurovascular couplingと呼ばれ、その構成要素はneurovascular unitと呼ばれています。neurovascular unitは脳の微小循環の維持・調節や様々な病態に大きく関与しています。我々は、その構成要素である脳細動脈の血管調節機能の研究を継続して行っています。

主にラットの脳内を走行する内径30~100μmの細動脈を摘出し、専用の血管臓器槽のなかで、細動脈をガラス製のマイクロピペットでカニュレーションします。内腔を加圧することで、in vitroですが生理的にほぼ近い環境をつくり、顕微鏡下で血管径を測定します。種々の条件や投薬を行い、細動脈の血管径の変化を観察し、その血管調節機能・脳微小循環機能を解明しています。
また、米国セントルイスのワシントン大学脳神経外科研究室でも同様の脳細動脈を用いた研究を行っており、過去に教室員が研究留学しており、現在も密に連携を取っています。

現在当教室で行っている研究は
・くも膜下出血後脳血管攣縮における脳微小循環の解明
・細胞外マグネシウム濃度増加による血管拡張作用の解明
・脳細動脈におけるG蛋白共役型エストロゲン受容体作動薬の影響
などです。

Barの大きさ50μm

脳腫瘍

コンドロイチン硫酸E(CS-E)は高度に硫酸化されたユニークなグリコサミノグリカン鎖であり、その生合成はN-アセチルガラクトサミン4硫酸6-O-硫酸転移酵素(GalNAc4S-6ST)によって触媒されます。CS-Eは神経膠腫において発現していることが知られていますが、その発現意義は明らかにされていません。われわれは神経膠腫細胞の増殖・浸潤におけるCS-Eの役割を明らかにすることにより新たな治療の探索を行っています。これまでに神経膠腫のホルマリン固定パラフィン包埋切片からtotal RNAを抽出し、定量PCR法にてGalNAc4S-6STの発現量を測定したところ、GAlNAac4S-6ST高値の症例は低値の症例に比べて5年予後が有意に不良であることをつきとめました。またRNA干渉によりGalNAc4S-6STの発現が低下した培養細胞を用いて腫瘍細胞の増殖能、走触能の解析を行っています。

微小解剖

先代教授である小林茂昭先生のアメリカでのロートン先生との研究に始まり、宜保浩彦先生、及川奏先生、柿澤と長期にわたり微小脳神経外科解剖には多くの力を注ぎこんできました。特に、宜保先生は、外間政信先生、大沢道彦先生、現教授本郷らと共同で、臨床のための脳局所解剖学という本の製作に携わり、比較的理解困難な解剖をきれいなイラストで詳細にまとめあげ、若手脳外科医師の教育にも役立てております。また、最近では3D headというiPadアプリケーションの開発により、頭蓋、脳、脳神経等を立体的にモデルとして示しました。
神経解剖を理解せず、よい手術はできない。という信念に基づき、更なる詳細な検討を重ねております。

<参考文献>

  1. Anatomical study of the trigeminal and facial cranial nerves with the aid of 3.0-tesla magnetic resonance imaging.Kakizawa Y, Seguchi T, Kodama K, Ogiwara T, Sasaki T, Goto T, Hongo K.J Neurosurg. 2008 Mar;108(3):483-90
  2. The course of the lesser petrosal nerve on the middle cranial fossa.Kakizawa Y, Abe H, Fukushima Y, Hongo K, El-Khouly H, Rhoton AL Jr.Neurosurgery. 2007 Sep;61(3 Suppl):15-23; discussion 23.
  3. Construction of a three-dimensional interactive model of the skull base and cranial nerves.Kakizawa Y, Hongo K, Rhoton AL Jr.

微小解剖 微小解剖

脊椎疾患

いま、脊椎脊髄疾患には、さまざまな器具を使用して、患者さんの負担を軽くしようとする治療が行われています。その一つが、ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂(PEEK)です。この素材は、チタン等の金属と比べて、放射線透過性に優れ、骨に剛性が近いために、脊髄疾患用インプラントに応用されています。様々な素材の組成を変え、より優れたPEEK製器具の開発を目標としています。

CFD

CFD (computational fluid dynamics)はコンピュータシュミレーションを用いた流体力学解析で、長野市にある信州大学工学部と共同で研究しています。特に脳動脈瘤に関する研究を主として行っており、3次元血管モデルおよび実症例のCTやMRI、脳血管撮影のデータを使用しCFD解析を行い、個々の脳動脈瘤における破裂しやすさを解明することを目的にしています。

実際の動脈瘤症例 実際の動脈瘤症例です。
データを専用ソフトを用いて変換しCFD解析を行います。
個々の動脈瘤におけるWall Shear Stressを測定することが可能です

3次元血管モデルでのstream line 3次元血管モデルでのstream line
動脈瘤内での血流方向がわかります

同動脈瘤にかかるWall Shear Stress 同動脈瘤にかかるWall Shear Stress(壁面せん断応力)を測定します。
近年、このWall Shear Stressと動脈瘤の発生、破裂との関連性が報告されています

神経再生

当学の人体構造学講座と共同し、ラットを用いた中枢神経軸索再生について研究を行っております。これまでに新生児ラットにおいて、嗅覚の主要伝導路である外側嗅索を切断しても成体ラットとなる4?8週後までの期間に神経線維が切断部を越えて再生すること、および機能的にも嗅覚が正常に維持されることを明らかにし、新生児ラット脳では脳内伝導路が形態的にも機能的にも自然再生されることを報告いたしました。
現在はこれを更に発展させて、嗅覚系自然再生ニューロンの定量解析を行っております。すなわち軸索切断された嗅球投射ニューロン(僧帽細胞)の総数を正常ラットの僧帽細胞数と比較検討し、何%のニューロンが自然再生するのか解析を進めております。併せて外側嗅索を切断するラットの日齢を変え、自然再生するニューロンの数が日齢によって変化(減少)するのか、減少するならばニューロンが自然再生可能な臨界期はいつであるか、等についても検討をしています。
僧帽細胞数の計測には現在最も信頼度が高いことが実証されている3Dステレオロジー解析装置を用いております。

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