口唇口蓋裂

信州大学形成外科では開設以来一貫して口唇口蓋裂の集学的治療を行っています。

長野県は広く、主に小児である口唇口蓋裂の患者さんたち全員に当院へ通い続けていただくのは大変な苦労を掛けてしまうこととなります。そのため、信州大学医学部附属病院、長野県立こども病院および松本歯科大学病院の3施設が中心となり、県内各地にある関連施設と連携し、多施設間チームによる口唇口蓋裂の集学的治療を行っております。県内の患者さんたちは安心してご自宅近くの施設に通院していただけるように診療環境を整えております。

私たちの施設の特徴として、まず初回口唇形成術の時期が比較的早期(生後1から2ヶ月)に行われているということがあげられます。一般的には生後6ヶ月頃に行われることが多いようです。この初回手術で、口唇と外鼻の変形を治します。早期に初回手術を行う理由は、生まれてから早い時期の方が鼻の軟骨が柔らかいのでその形と位置を治しやすいこと、早い時期から唇の筋肉を連続させることでその正常な発達が見込まれること、ご両親の苦悩を早く取り除けることなどが挙げられます。近年、口唇と外鼻の術前顎矯正を数ヶ月行ってから初回口唇手術を行っている施設が多くありますが、私たちの施設では術前矯正のために初回手術の時期を遅らせることはありません。口唇と外鼻は手術で治し、顎は口唇の筋肉を正常化することで自然に矯正されることになります。哺乳床は、ご希望があれば使用することもあります。

口蓋形成術は1歳から1歳6ヶ月の間に行っています。口蓋裂の治療の問題点は言語成績と上顎成長障害です。まず、言語成績が良いということが第一ですが、上顎成長に問題が出ないような手術方法を工夫しております。

小学校入学前には、ご希望があれば、口唇と外鼻の修正手術を行うことがあります。この時期までには、言語聴覚士による言語評価や必要あれば言語治療、様々な検査機器を用いた軟口蓋の機能評価が行われます。その結果により、口蓋の修正手術が行われることもわずかながらあります。

小学生で歯の生え替わる時期には腰骨(腸骨という骨です)を上顎骨の骨の欠損部(歯茎の部位です)に移植する手術を行います。腸骨の中にある骨髄の柔らかい骨のみ移植に使用します。周りの硬い骨には傷をつけません。骨のとり方を工夫した結果、手術して3日目には歩けるようになります。食事は、硬いものは1ヶ月待っていただきますが、柔らかなものであれば手術翌日より口から食べていただいています。この骨の移植手術前から歯科矯正が始まっています。

上顎骨の成長障害により受け口となってしまった患者様の場合、噛み合わせを良くして、見た目も良くするために顔面の骨切り手術を行います。顔面の骨切り手術は基本的には成長がほぼ終了した時点で行いますが、成長過程ですでに上下顎のアンバランスが著しい場合には、顔面骨の骨延長を成長終了前に行うこともあります。

私たちの治療の目標は、口唇口蓋裂のお子さん、そしてご両親、ご家族が、もって生まれた病気をハンディキャップと感じることなく、治療のことはあまり意識せずに、どの年代においても楽しく通常通りの生活を送っていただくことにあります。そのために、可能な限り通院や治療の機会を減らし、負担をかけずに、確実な結果が出せる治療を行って行きたいと思います。

詳しくは下記HPをご覧ください。

長野県口唇口蓋裂センターHPへのリンク


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