
信州大学学術研究院教育学系 理科教育グループ 准教授 | |
専門分野: | 地質学(火山灰層序学・第四紀学) |
---|---|
研究テーマ: |
|
当研究室は、野外地質調査を基盤として、大地の形成過程や環境の変遷に迫ることをテーマとしています。
具体的には、地層の種類やその積み重なり方などを記載し、火山灰層などを鍵層*にもちいて離れた地域間の地層をつないだり、地層や岩石がどういう順序で形成されたのかを明らかにして、現在の地形や環境がどのようにして出来上がってきたのかを解明していく研究です。
*地質学では、火山灰など短時間で広い範囲に形成され、離れた地域間の地層をつなぐために有用な地層のことを鍵層と呼びます。
戸隠連峰と高妻山 手前は瑪瑙山(飯縄山のピークの1つ)、奥の白い峰々は北アルプス
長野県の地質(地層や岩石の種類や構造)は、世界的に見ても非常に変化に富んでいます。言いかえれば、それだけ変動の激しい地域だということです。長野県をはじめ中央日本は、地層から過去の出来事を探る研究をするにはうってつけの地域です。
地層という地球が記録してきたメッセージを読み解く作業は、地道で忍耐を必要としますが、地層や岩石から過去だけでなく、現在そして未来を皆さんと一緒に考えてみたいと思っています。
降って積ったテフラ 白っぽい層が降下軽石層で、くり返し爆発的な噴火が起きたことがわかります。
わかりやすい言葉で言えば「火山灰」と似ていますが、テフラと火山灰はちょっと違います。専門的には、火山灰は爆発的な噴火で形成される2mmより細かい粒(マグマや火山岩の破片)を指す言葉です。しかし、1回の噴火でも様々な大きさの粒が形成されます。そして、火山から遠く離れた場所では細かい火山灰が積もりますが、火山に近いところでは1mを越えるような大きな粒が積もることもあります。このように、1回の同じ噴火でも場所によって火山灰層と呼べる地層が形成されるところもあれば、そうではないところもあるのです。
そこで、「テフラ」という言葉が出てきます。テフラとは、火山の爆発的な噴火で形成されるマグマの破片の総称で、降下火山砕屑物(マグマの破片が降って積った地層)・火砕流堆積物(マグマの破片が火山ガスとともに高温で流れ下って積った地層)・火山サージ堆積物(火砕流に似ていますが、もっと希薄で速度の速い流れで積った地層)を指す言葉です。
第四紀とは、現在を含む地球の歴史の中で最も新しい時代を指す言葉です。数値で表すと約260万年前より新しい年代です。この時代は、氷河期がくり返しおとずれるのが特徴で、人類が進化してきた時代でもあるので、別名として「氷河時代」や「人類紀」と呼ばれることもあります。第四紀学とは、この時代の地層や岩石を対象として、現在に続く地形(山や盆地、平野や扇状地など)や環境(気温や降水量、動植物、人間活動など)の変遷を総合的に研究する分野です。