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教員養成GPフォーラム2

いま、学校に求められる教師の専門性とは

―教員養成GPフォーラムⅡ 第2回 教員養成国際シンポジウム・講演会の概要―

 

教員養成 GP フォーラムⅡ(いま、学校に求められる教師の専門性とは)は、若里市民文化ホールを会場に、平成 18 年8月 10 日・ 11 日の二日間、以下のプログラムで行われた。

《教員養成国際シンポジウム》
フィンランドの教師の日常と専門性(司 会: 守 一雄)
・講師: Irmeli Pietil a (ユバスキュラ教員養成大学附属学校教諭)
イギリスの教師の日常と専門性
・講師: Jill Tuffee (マルベリースクール副校長)
日本の教師の日常と専門性
・講師:清水保徳(東京学芸大学附属竹早小学校教諭)
パネル・ディスカッション「教師の専門性とは何か」
・パネラー: Irmeli Pietil a 、 Jill Tuffee 、清水保徳
・ 指定討論者:藤森裕治

《講演会》
「これからの学校に求められる教師像」
・講師:尾木直樹氏(教育評論家・法政大学教授)

【概要と要点】
○ 教員養成国際シンポジウム
「学校間格差を解消しようとするフィンランドと、競争原理を徹底させようとするイギリス。それぞれの国から現役教師をお招きし、日本の教師と共 に現場での実状を語り合い、教師に求められる専門性について議論し合います。」
この主旨に基づき、イルメリ氏からはフィンランドにおける教育課程と共に、教師の専門性と日常の役割について求められる要素が示された。その中で特に強調されていたのは、次の点である。
・教師としての権利と義務の意識
・リフレクション
・異なる種類のチームやネットワーク

続くジル氏からはイギリスにおける中等教育の実際として、副校長を勤めるマルベリースクールでの実践が紹介された。同校はバングラディシュ移民地区にある 女子校で、貧困家庭が多いにもかかわらず、ナショナルテストでは中堅校レベルを維持している。その実績を支える要因としてジル氏が強調するのは、学校が学 びの共同体となること、教師自身が学びの先達として自己啓発に努め、生徒がよりよい学習を実現するために支援することであった。

清水氏は、新卒教師であった時代から現在に至る自身のライフヒストリーを紹介しつつ、近年の実践として「命」をテーマとする総合的な学習について報告して いる。それは、4年生の時に父親をガンで亡くしたチエ子から寄せられた日記に始まる長期の学習過程で、クラスの仲間たちの真心に支えられて明るさを取り戻 していったチエ子の学習史であった。クラスのもつ学びの力を実感した清水氏は、教師をとりまく現状は楽ではないが、それでも夢を語ろうと呼びかけて発表を 結んだ。

○ パネル・ディスカッション
3氏をパネリストに招いて開催されたパネル・ディスカッションでは、会場から寄せられた質問をもとに、指定討論者より質問が投げかけられた。そのうち、本フォーラムのテーマに関連する発言について要点を記す。

問:これまでに経験した教師の営みの中で、特に印象に残っているものは何か。
イルメリ氏:低学年の寡黙児 ( 女 ) についての経験である。私は家庭環境がこの子の症状の背景にあることを察知したが、根気よく当人を見守り、励まし、声をかけ続けた。そうして長い月日が流 れたある日、彼女が初めて小さな握り拳を差し出し、「見て」と言いながら拳を開いて握っていたものを見せたのである。ちなみに彼女は今、ソーシャルワー カーを勤めている。
ジル氏:教師としてシェイクスピア演劇の授業に臨んだ時の経験である。授業はナショナル・カリキュラムに沿って、ロミオとジュリエットを演じることを課 題とした。ところが、家と家の格式に応じて縁組みを決める習慣のあるバングラディシュ人の女子生徒にとって、この作品は身につまされて演じられないとい う。そこで別の作品に代えて授業を行ったが、ナショナルテストで高得点を取る必要を思うと今でもジレンマを感じている。
清水氏:発表で触れた「命」の学習についてのその後。いずれも、印象に残るエピソードには、予想外のネガティヴな経験が伴う点で共通する。そうした経験 を省察しつつ、教師が自身の専門性を磨いている点において、洋の東西を問わないことが共感されたディスカッションであった。

○ 講演会
教育評論家の尾木直樹氏の講演には多くの教員が参加し、ユーモアにあふれる話しぶりに、終始笑いが絶えなかった。しかし、話題として出される内容は、近年 の少年少女による殺人事件の背景に関する深い洞察であり、子どもの心に潜む闇と日本の教育行政が陥る自己管理能力の崩壊について、思いを新たにさせられる ものであった。
尾木氏が取り上げた話題例とその要点は、以下の通りである。
・奈良の放火殺人事件:厳格な父と継母らの家庭環境におかれ、絶望的な孤独に追いやられた息子に気づき得なかった父の苦しみと、それでも父を敬慕する少年のいたましさ。
・佐世保の小学女児殺人事件:給食の配送を断らなかったのを理由に、事件直後平常通り授業をした学校の機能不全。

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