教員紹介

つじ りゅうへい

辻 竜平

社会学 教授

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3.研究活動

第30回サンベルト会議参加報告

6月末から7月初旬にかけて,イタリアのリヴァ・デル・ガルダ(Riva del Garda)で行われた,国際社会ネットワーク分析学会(INSNA)の第30回大会(通称,サンベルト会議)に発表・参加してきました.

本来,最も専門に近い領域の学会であるにもかかわらず,なかなか参加する機会に恵まれず,1999年以来11年ぶりの参加でした.十年も行かない間に,学会の規模がとても大きくなっていたのにまず驚きました.その理由の1つは,ちょうど十年ほど前に「ネットワーク科学」という分野が大きく注目されることになったことによるのだと思います.また,この学会は,2年間アメリカ,1年はヨーロッパという周期で行われているのですが,今回はヨーロッパの開催ということで,ヨーロッパ各国から多くの研究者・学生が集まっていたことにもよるのだと思われました.私がアメリカに留学していたころに,スイスやドイツから留学してきていた友人たちは,それぞれジュネーヴから6時間とかミュンヘンから4時間とかで現地まで運転してきたようでしたが,ヨーロッパの国境はとても近いのだなと再認識しました.

 

社会関係資本論にかかわる部会が3つありましたが,それ以外にも社会関係資本にかかわる発表はあちこちで見られました.いくつかの発表を聞いて思ったことは,どこの国でも同じような研究をやっているということでした.たとえば,われわれがやってきたような,一般的信頼とネットワークとの関係といったものです.多少の手法の違いや用いる尺度の違いなどはあっても,出ている結果はおおむね同じで,(予想に反して?)一般的信頼と多様性あるいは開放性の間には関係が見られないといった結果がヨーロッパにおいても見られるようだということでした.日本では,山岸俊男氏の『信頼の構造』を受けて,その後社会調査ではなかなか山岸氏の予想どおりの結果が出にくいことが発表されてきていますが,それはヨーロッパ社会においてもやはりそうだったのだとということで,私としては,むしろこれまでわれわれがやってきたことが日本だけではなく,ユニバーサルな傾向にありそうだということが言えそうかなということで,少しうれしくなりました.何人かに名刺を渡して,共同研究を模索することを考えないかと声をかけてきました.

 

私自身も昨年行ったサイトウ・キネン・フェスティバルにかかわるボランティアの人たちのデータをもとに,社会関係資本の部会で発表してきました.発表自体は,自分ではまずまずかなという感じでした.反応としては,ネットワーク・バッテリとしてポジション・ジェネレータを使うことが適切かといった質問が出ましたが,ネーム・ジェネレータでは,少数のネットワーク他者に回答が限られてしまうが,それはわれわれの意図とは違う,というような回答をしておきました.ただ,理論的にはやや粗っぽかったかもしれないという気持ちは若干あるので,もう少しブラッシュアップする必要があるかもしれません.セッションの後に,インドネシア人でスウェーデンに留学しているという珍しい経歴の女性の学生さんが,ネットワークを活用するということについてわれわれがやったようなやり方で測定することがおもしろいと言ってくれました.少しでも反応があってよかったと思います.

 

日本のネットワーク分析の現状について思うことは,スモールワールドやスケールフリーといった新興の分野の勢力はそれなりに分厚いと思うのですが,旧来の社会ネットワーク分析の流れをくむ研究とp*(ピースター)などの統計的な分析法の開発については,出遅れているように感じました.そもそも社会学の出身の社会ネットワーク分析研究者が非常に少ないということもあるのですが,私は近年は実証に向かっており,そういった問題から少し距離ができてしまっています.社会ネットワークの統計分析法の開発に関心を持ってくれる統計学に強い院生が数人出て来てくれると,日本の社会ネットワーク分析の将来はもっと明るくなるのになと思いました.そういう関心がある人が,私のところにポスドクにでも来てくれればすごくうれしいです(希望的観測…遠い目).

 

キーノート・スピーカーはユトレヒト大学のTom Snijdersでした.私の尊敬する研究者の1人です.彼は,マルチ・レベル分析の教科書を書いたりもしていますが,話の内容もやはりネットワーク分析と統計学をつなぐような話でした.私のこれまでの社会ネットワーク分析についての捉え方とは違う角度からの見方がいくつか出てきて,なるほどそういう捉え方もあるなぁと思いました.ある点からすれば,社会ネットワーク分析と統計学の考え方や対象はかなり違っているということを端的に示し,彼なりにその解法の方向性を示しました.これについては,また私の中で消化しながら,研究の中で活かしていきたいと思います.

 

非常に多くの発表があり,平行セッションも多く,また,疲れてしまって全部聞いていられないということもありましたが,実のところ,あまり「してやられた」という感じのする発表はありませんでした.規模が大きくなって,皆が同じようなことをそれぞれにやっているという感じが強くしました.なので,「まあ,そんな感じだよな」というものが多かった気がします.
その中では,Carter Buttsのexponentialな分布からのサンプリングの話などは創意工夫があっておもしろいと思いました.ただ,いつもの超高速トークかつかなり高度な技法を使っているために,完全に理解できたとは思えませんが,何とかエッセンスは得たかなと思っています.

 

最初にも書きましたが,世話になった先生や友人たちと十数年ぶりに再会しました.スイス人のE君とは11年ぶりだと思いますし,ドイツ人のCさんとは13年ぶりくらいかと思います.E君はだいぶん出世していてジュネーヴ大学の教員になっていて,何人かのお弟子さんとフィンランドやポルトガルの共同研究者の人たちと来ていました.夕食をともにしながら,ここ十年の互いの成功を喜び合い,これからはもう少し連絡を取り合っていこうなどと話をしました.Cさんとは,立ち話程度しかできませんでしたが,何とか無事にやっているようでした.
今回は,ヨーロッパでの大会ということもあり,米国からの参加者は比率としては少なく,西海岸の母校UC Irvineからは,3人の教員が来ているだけでした.(私が留学していた当時からの教員はJ先生1人だけでした.J先生とは2年前にも日米数理社会学合同会議で会って以来でした.)また,UCLAで私の博士論文の審査にも入ってもらったP先生も来ておられましたが,J先生もP先生もすでにリタイアされたとのことで,時代が移りゆくのを感じました.
今度は,アメリカで行われる会議にも参加したいところです.ただ,アメリカでは2月のことが多く,入試業務のためになかなか参加できません.うまく予定があいている時期だとよいのですが.

ともあれ,収穫の多い会議でした.また近いうちに是非参加したいです.

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